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【作品解説】エル・リシツキー「赤い楔で白を穿て 」

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赤い楔で白を穿て / Beat the Whites with the Red Wedge

抽象的なプロパガンダ芸術


エル・リシツキー《赤い楔で白を穿て》1919年
エル・リシツキー《赤い楔で白を穿て》1919年

概要


作者 エル・リシツキー
制作年 1919年
メディウム リトグラフ
ムーブメント ロシア構成主義、プロパガンダアート

《赤い楔で白を穿て》は1919年にエル・リシツキーによって制作されたソ連のプロパガンダポスター。一見するとシュプレマティスムの純粋絵画に思えるが、この絵は明確にプロパガンダ・ポスターを意図して制作されている。ロシア構成主義の一例としてよく紹介される。

 

ロシア内戦中に敵対勢力である白人運動を貫き、撃破しているボリシェビキを象徴している。ロシアは当時内乱状態で、「赤(共産主義者)」と「白(保守者、リベラル派、ボルシェを革命に反対するほかの社会主義者)」に分かれていた。この絵は、赤いくさびが白いフォルムを打ち砕くイメージは、シンプルながらも、その意図を疑う余地のない力強いメッセージを伝えていた。

 

つまり、リシツキーはシュプレマティスムの色や形態を意味を持つ記号へと転用し、抽象絵画を政治的プロパガンダに応用したのである。しかし、このイメージは、1921年にリシツキーがドイツに移住した際に欧米で人気を博した。西洋の出版物ではロシア内戦を象徴するものとされている。者の制作意図とは異なるかたちで西洋で受け入れられ評価された

 

この作品は、軍事地図に使われているよく似た記号を暗示していると解釈されており、その政治的象徴性とともに、マレーヴィッチのシュプレマティズムからリシツキー自身のスタイルへと進歩する最初の大きな一歩となった。

 

リシツキーは次のように述べている。

 

「芸術家は筆で新しい象徴を構築する。この象徴は、すでに完成しているもの、すでに作られているもの、あるいは世界にすでに存在するものの認識可能な形ではなく、それは新しい世界の象徴であり、それは上に築かれようとしているものであり、人々の方法によって存在するものである」



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