後期近代美術 / Postmodernart
近代美術の後の芸術
概要
ポストモダン・アート(近代美術の後の芸術)とは、近代美術の側面を否定、または近代美術の余波から出現または発展した芸術運動である。
一般的には、インターメディア、コンセプチュアル・アート、インスタレーション、マルチメディア、なかでもビデオ・アートが代表的なポストモダンアートとみなされている。現代美術(コンテンポラリー・アート)とも呼ばれる。
現在は1950年代以降に制作されたアートを指す言葉として「現代美術(contemporary art)」という言葉が主流となっている。
近代美術までは視覚的な形態によって良し悪しが判断されていたが、1960年代後半以降、哲学的な考察や社会批評要素が含まれる芸術が中心となりはじめた。それをコンセプチュアルアートという。美術批評家のアーサー・ダントーの定義ではポストモダンアートは多かれ少なかれ、このコンセプチュアルが基盤となっている。
ポストモダンアートはほかにも近代美術とは異なる特徴がある。ブリコラージュやレディメイドなど絵具ではなく既成物を利用した作品。極端に簡素化されたミニマリズム。パフォーマンス・アート。過去の美術スタイルや主題を現代の文脈に置き換える表現。ファイン&ハイアートとロウ&ポップカルチャーの境界線を曖昧にするといった表現などである。
なお、最近では近代美術とその後に来るポストモダンアートの両方を包括した美術全体を指す言葉として「近現代美術(modern and contemporary art)」と呼ぶときがある。
重要ポイント
- 1950年代以降に制作されたアート全般のこと
- 近代美術から生まれ近代美術や前衛を否定する運動
- コンセプチュアルな要素を含む
- 新旧、ハイとロウなど相反するものを並列する要素を含む
用語の起源や解釈
現在は1950年代以降に制作されたアートを指す言葉として「現代美術(contemporary art)」という言葉が主流となっている。
ただし、現代美術と呼ばれるすべての美術がポストモダン・アートではなく、より広義的な意味では、近代美術(moderart)や後期近代美術(late-modernart)の伝統を継承して活動しているアーティストと、それ以外の理由でポストモダンを拒否するアーティストも現代美術として含まれる。
何が「後期近代(late-modern)」で何が「近代美術の後(post-modern)」なのかというコンセンサスはない。批評家の中には、現在のポストモダン・アートの多くは最新の前衛芸術であるが、それでも近代美術として分類されるべきだと主張する者もいる。
アーサー・ダントーは、「現代」という言葉はより広義的な意味であり、ポストモダンとは現代美術という枠における「サブセクター(下位部門)」を表していると主張している。
ほかには、ポストモダンは現代美術の特定の傾向を表すだけでなく、近代美術の一段階を表すためにも使われている。クレメント・グリーンバーグのようなモダニズムの擁護者や、モダニズムの「最後のあえぎ」と呼ぶフェリックス・ガタリのようなモダニズムの急進的な反対者もこの立場を採用している。
新保守派のヒルトン・クレーマーは、ポストモダニズムを「モダニズムの綱の終わりにあるモダニズムの創造」と表現している。また、フレデリック・ジェイムソンの分析では、ジャン=フランソワ・レオタールは、ハイ・モダニズムの時代とは根本的に異なるポストモダニズムの段階があるとは考えていない。その代わりに、ポストモダニズムのこのスタイル、あるいはそのハイ・モダニズムのスタイルへの不満は、ハイ・モダニズムの実験の一部であり、新しいモダニズムを生み出しているという。
多くの批評家は、ポストモダン・アートは近代美術から生まれたものだと考えている。近代からポストモダンへの移行の時期としては、ヨーロッパでは1914年、アメリカでは1962年、1968年などが挙げられている。
ジェームズ・エルキンスは、モダニズムからポストモダニズムへの移行の正確な時期についての議論についてこのようなコメントしている。ポストモダンが今世紀後半に始まったのかどうかという議論は、マニエリスムの正確な時期が盛期ルネサンスの直後に始まったかどうか議論していた1960年代と似ているという。そしてエルキンスは、このような議論はアートの動きや時代に関しては常に行われているという指摘をしつつも、論議すること自体は悪いことでないと話している。
ジャン・ボードリヤールは、ポストモダンにインスパイアされた芸術に大きな影響を与え、新しい創造性の形の可能性を強調した。例えば、アーティストのピーター・ハレーは、彼のデイグローの色彩を「本物の色の超現実化」と表現し、ボードリヤールに影響を受けたと認めている。
ボードリヤール自身は1984年以降、現代美術、特にポストモダン美術は第二次世界大戦後のモダニズム美術に劣るとの見解を貫き、一方ジャン・フランソワ・レオタールは現代絵画を賞賛し、近代美術からの進化を指摘している。
20世紀の主要な女性芸術家は、彼らの作品の多くの理論的な芸術表現が、フランスの精神分析やフェミニスト理論から生まれたことから、ポストモダン・アートと結びついているという。
1また、980年代半ば以降、比較的特殊な素材や一般的な技法を用いた戦後のある種の「スクール」の作品を指す一種の略語としてこの用語が使われるようになったが、ポストモダニズムのエポック的、あるいは認識論的な分裂としての理論的基盤については、いまだに多くの議論がある。
ポストモダンという言葉の使用と美術への適用に批判的な人たちもいる。例えば、カーク・バーネドーは、ポストモダニズムのようなものは存在せずモダニズムの可能性はまだ尽きていないと述べている。
ポストモダニズムという言葉が批判的な響きを失った1980年代末にポストモダニズムの時代が終わり、アートの実践がグローバリゼーションと新しいメディアの影響に対処し始めたという。
ポストモダン・アートの定義
モダニズムから生まれモダニズムを否定する運動
ポストモダニズムとは、モダニズムの傾向から発生するが、モダニズムの傾向に反発したり拒絶したりする運動を指す。
モダニズムの特定の傾向に関する一般的な例証は、形式的な純粋性、媒体の特異性、芸術のための芸術、真正性、普遍性、独創性、革命的または反動的な傾向、すなわち「前衛」である。
しかし、パラドックスがおそらくポストモダニズムに対応した最も重要なモダニズムの思想である。パラドックスはマネが導入したモダニズムの中心的存在だった。
マネのさまざまな表象芸術への冒涜は、現実と表象、デザインと表象、抽象と現実などの相互の排他性を浮き彫りにした。このようなパラドックスの導入は、マネからコンセプチュアル・アーティストたちに大きな刺激を与えた。
前衛の地位が物議を醸している。多くの機関は、先見性があり、前向きで、最先端で、進歩的であることが、現在のアートの使命に不可欠であると主張している。それゆえにポストモダンの芸術は「現代の芸術」の価値と矛盾している。ポストモダニズムは、それ自体が芸術の進歩や進歩という概念を否定し、「前衛の神話」を覆すことを目指しているためである。
ロザリンド・クラウスは、「前衛主義は終わり、新しい芸術の時代とはポストリベラル、ポスト・プログレスである」という見解を打ち出した重要な論者の一人である。
グリゼルダ・ポロックは、ポストモダン美術を再定義すると同時に現代美術を見直す画期的な著作を次々と発表し、前衛と現代美術を研究し、対峙した。
ハイカルチャーとローカルチャーの境界線の消失
ポストモダン・アートの特徴の一つは、工業的な素材やポップカルチャーのイメージを用いて、ハイカルチャーとローカルチャーを混同していることである。
ローカルチャーの使用は、ニューヨーク近代美術館で開催されたカーク・ヴァーネドーとアダム・ゴプニックの1990-91年の展覧会「High and Low: Popular Culture and Modern Art」でも記録されているように、モダニズムの実験の一部でもあった。
ポストモダン・アートは、ファインアートやハイアートと一般的に見られるものと、ローアートやキッチュアートとの区別を曖昧にすることでも知られている。
このようなハイアートとローアートの「曖昧さ」や「融合」という概念は、近代美術の時代にも実験的に行われていたが、ポストモダンの時代になってから本格的に支持されるようになった。
商業主義、キッチュ、文脈の拒絶
ポストモダニズムは、その芸術的文脈の中に商業主義、キッチュ、一般的なキャンプ美学の要素を導入した。
さらに、ポストモダニズムは、ゴシック、ルネサンス、バロックなどの過去の時代のスタイルを取り、対応する芸術運動の中でのオリジナルの文脈を無視して織り交ぜた。このような要素は、ポストモダン芸術を定義するものに共通する特徴である。
古いものと新しいものの並置、特に過去の時代のスタイルを現代美術に取り入れ、それを元の文脈から外れた形で再構成することは、ポストモダン美術の共通の特徴である。
ひとつのコンパクトな定義として、ポストモダニズムはモダニズムの芸術的方向性という壮大な物語性を拒絶し、芸術の高低の境界を根絶し、衝突、コラージュ、断片化によってジャンルの慣習を破壊する。
ポストモダン・アート運動
・インスタレーション・アート
・スーパー・フラット/村上隆
・パフォーマンス・アート/マリーナ・アブラモヴィッチ
・デジタル・アート
・インターメディア&マルチメディア
・テレマティックアート
・新コンセプチュアルアート
・新表現主義/ジャン・ミシェル・バスキア
■参考文献
・https://en.wikipedia.org/wiki/Postmodern_art、2020年5月22日アクセス