プロテスト・アート / Protest art
政治メッセージ性が強い抗議芸術
概要
プロテストアートは活動家や社会運動によって生成された芸術。伝統的なコミュニケーションの手段であり、市民に情報を与え、説得するために利用される。
体制側のプロパガンダ・アートととことなり、おもにデモ活動に参加する抗議者が集会を宣伝したり、ときには警察や政府に対して反体制的なメッセージを投げかける役割を果たす。
プロテスト・アートは、パフォーマンス、インスタレーション、グラフィティ、ストリート・アートなど表現手法は多岐にわたる。また、は特定の地域や国に限定されたものではなく、むしろ世界中で使われている手法である。
プロテスト・アートは、参加者の基本的な感情を喚起するのに役立ち、緊張を高め、抗議活動への新たな機会を作り出す。また、最近の出来事を風刺的に表現することで、緊張を解き明るくコメディのような安堵感を与えることもある。さらに、抗議者の間の結束を示し、仲間の活動家を励まし、精神衛生上の意識を高める。
ベルリン・ダダ、草間彌生のハプニングなどにプロテスト・アートの原型が見られる。また、より多くの観客にリーチするために、美術界の機関や商業的なギャラリー・システムを利用することも多い。パブロ・ピカソの『ゲルニカ』は政治的メッセージの強いプロテスト・アートとして見られることもある。
香港プロテスト・アート
香港プロテスト・アートにおいておもに利用される手法はポスターである。絵画や壁画と異なりポスターは、市民が抗議活動に参加せずに自分たちの意見を表現するための平和的で代替的な方法とみなされている。
特に、香港の抗議活動のような匿名性が高くリーダー不在のプロテストとポスターの相性がよい。香港のプロテスト・アートのほとんどのアーティストは匿名のままか、運動のリーダー不在の性質に合わせてペンネームを利用している。
香港プロテスト・アートのデザインのアイデアは、LIHKGという掲示板上で不特定多数の人のアイデアから作り出されたものである。作成されたイメージは街中に設置されたレノンウォールやTelegramのチャンネル、AppleのAirDrop機能などを利用して広く配布される。
日本のアニメの芸術スタイルを採用していることが多いが、ほかにもさまざまなポップカルチャーメディアから影響を受けて制作されている。
香港バプテスト大学の学生組合の会長が警察に「レーザー銃」とみなされレーザーポインターを所持して逮捕されたとき、抗議者たちは「スター・ウォーズ」のライトセーバーの要素を取り込んだポスターを作成した。
ダン・バレット氏は、抗議者たちはディストピア的なテーマや反権威主義的なテーマをデザインに取り入れていると指摘している。
彼によると、「(ヒーローやヒロインが)乗り越えられないほどの困難にもかかわらず、悪の全体主義的な政権や支配者を打ち負かすことを描いたジャンルは、抗議運動の最前線にいる若い世代の香港人の間で特にモチベーションを高めているようだ」という。
また、多くのプロテスト・アートのデザインは、アルバムのカバーやハリウッド映画のポスターと似ている。
黄色のレインコートを着た男性(マルコ・レオンに似ている)、目から血が出ている女性(8月11日に女性抗議者の目が豆袋の丸で傷つけられたとされる事件を示唆している)、9月15日のノースポイント紛争で逮捕された抗議者のチャン・イーチュンなど、抗議活動に関わった著名な人物がプロテスト・アートによく登場する。
■参考文献
・https://en.wikipedia.org/wiki/Protest_art、2020年5月25日アクセス