もしマスクをしないと、得ることはできない / If you don’t mask - you don’t get.
消毒清掃員を装ってロンドン地下鉄で落書き
概要
『もしマスクをしないと、得ることはできない』は、2020年7月14日にバンクシーがInstagramに投稿したビデオ作品。消毒清掃員を装った男がロンドン地下鉄車内で落書きしている映像である。男がバンクシー本人かどうかは不明。
『ロンドン・アンダーグラウンド/深い洗浄を受ける』というタイトルが付けられたビデオをバンクシーがパソコン上で編集・視聴しているシーンから始まる。
パソコンのモニタに映る男の身体は、白い防護服、青い手術用手袋、フルフェイスのガスマスクで覆われており、絵具入りのスプレー缶とキャンバスを手に持ち、地下鉄車内の乗り込む。車内で男はキャンバスを広げ、清掃員を装うような振る舞いで、電車の壁にステンシルを使ってネズミを描いたり、窓にスプレーを吹き付けていく。
天井からぶら下がっているように描かれたネズミたちは、サージカルマスクで作られたパラシュートにぶら下がり、手には消毒液を握りしめている。車内の連絡扉に青い絵具で大きく「BANKSY」と描いている。
都市のゴミや病気の媒介者の象徴として描かれるネズミは、バンクシーが頻繁に描くモチーフである。
地下鉄車内で作品を描いている男やパソコンを操作している男がバンクシー本人かどうか、また2人は同一人物かは不明である。パソコンを使っている男がまるで人形師のように実行している男を操っているように見える。
電車のアナウンスが次の停車駅を告げるまで映像は続き、清掃員を装った男が車内からホームへ降りて去っていくが、降りたホーム先の壁には「I GET LOCKDOWN(ロックダウンされた)」という文字が描かれている。
また電車のドアが閉まると「BUT I GET UP AGAIN(でも、また起き上がってやるさ)」という文字が現れ、1997年にリリースされたチャンバワンバの「Tubthumping (I Get Knocked Down)」の音楽が流れる。これは、knocked downとlockdownのダジャレであり、チャンバワンバの歌詞を引用している。
なお、本作品はInstagramにビデオを投稿する前に、ロンドン交通局は「厳格な落書き防止方針」に違反により消去している。当時、清掃員はアートワークがバンクシーによるものであるとは考えていなかったため、内部関係者は消去は実際には偶発的であると思われる。
そのため、消去したもののロンドン交通局は、ビデオ発表後にバンクシーの「人々にマスク着用を勧める姿勢」を高く評価し、「適切な場所でバンクシーの新しいメッセージを届ける機会を提供したい」と述べた。
新型コロナウイルスが猛威をふるっている2020年に制作されたもので、バンクシーが新型コロナウイルスについて投稿したのはこれが初めてではない。
同年4月、バンクシーは在宅インスタレーション作品の写真をInstagramに投稿した。ネズミの絵が彼のバスルームを走り回っている内容だった。
また同年5月、新型コロナウイルスと戦う医療従事者を称えるために、マスクとマントを着たナース人形で遊ぶ子供を描いた『ゲームチェンジャー』というタイトルのドローイング作品を発表している。
■参考文献
・https://news.artnet.com/art-world/banksy-spray-painted-london-tube-1894661、2020年9月29日アクセス
・https://currently.att.yahoo.com/att/banksy-tags-coronavirus-message-london-174713330.html、2020年9月29日アクセス