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【美術解説】KAWS(カウズ)「目がバッテン×のキャラで人気のアーティスト」

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カウズ / KAWS

ストリート・ファッションとアートの融合


※1:アムステルダム美術館で設置された《アロング・ザ・ウェイ》
※1:アムステルダム美術館で設置された《アロング・ザ・ウェイ》

概要


生年月日 1974年11月4日
住居 ニューヨーク
国籍 アメリカ
ムーブメント ストリート・アート
表現形式 絵画、彫刻、グラフィックデザイン、グラフィティ、トイ
公式サイト https://kawsone.com

ブライアン・ドネリー(1974年11月4日生まれ)、通称「KAWS」は、ニューヨークを基盤にして活動している画家、グラフィック・デザイナー、彫刻家、トイ作家、ファッションデザイナー、ストリート・アーティスト

 

KAWSの作品では目がバッテンが特徴のキャラクター「コンパニオン」をはじめ、1990年代までさかのぼる初期キャリア時代に作成した同じ具象的なキャラクターやモチーフが繰り返し使われる

 

彼自身が創作したキャラクターもあれば、ディズニーやセサミ・ストリートなど既存のキャラクターを再構築したものもある。

 

当初はグラフィティなど平面で描かれていたが、のちにトイやバルーンなど立体作品へと発展した。結果、アートとトイを融合したアート・トイの先駆者となり、ファッションとアートを橋渡しするための土台を築き上げた

 

KAWSの立体作品の大きさは、数インチの小さな作品から10メートル以上に及ぶ巨大なものまで作品のサイズはさまざまで、さらに、状況に応じてアルミニウム、木、ブロンズ、スチール製ポンツーン型インフレータブルラフトなど多種多様な素材が使われる。

 

 

KAWSは、ゲルハルト・リヒター、クレス・オルデンバーグ、チャック・クローズなどの伝統的なファイン・アートの画家たちから影響を受けており、商業主義とファインアートの境界線を曖昧にする能力があることからアンディ・ウォーホルなどと比較されることが多い。

 

 

KAWSは一般的な現代美術家のようにギャラリーで作品を発表するのはなく、グラフィティ・アーティストやブランドとのコラボレーション作品から作品制作をはじめたこともあり、現代美術業界だけでなく一般庶民層まで幅広く認知されている。

 

彼の作品は、ウォーホルと同じくコレクターからの人気が非常に高く、ギャラリーや美術館で展示されるほか、公共機関のパーマネントコレクションとして所蔵され、音楽プロデューサーのスウィズ・ビーツ、インターネット上で活躍するPewDiePie、ラッパーのファレル・ウィリアムス、韓国のグループBTSのメンバーなどの著名人が熱心に収集している。

 

現在、KAWSはニューヨークのブルックリンを拠点にして作品を制作している。彫刻、キャンバスに描いたアクリル画、スクリーンプリントなどを制作する一方で、商業的なコラボレーションも行っている。おもにに限定版の玩具のほか、衣類やスケートボードデッキなどの製品も手がけている。

 

2019年6月、中国でUNIQLO x KAWSのコラボTシャツの争奪をめぐる大規模争奪騒動が発生。アリババのECサイトで商品の販売が始まったが、瞬く間に売り切れになったあと、翌朝の実店舗に広がる。実店舗にオープン前から客が集まり、開店と同時になだれ込み商品の争奪合戦が繰り広げられた。

重要ポイント

  • ウォーホルと並んでコレクターからの人気が最も高い現代美術家の一人
  • 目がバッテンのキャラ「コンパニオン」が有名
  • アートとトイを融合させたアート・トイの先駆者

略歴


若齢期


KAWSはニュージャージ州のジャージーシティで生まれた。本名ブライアン・ドネリー。1996年にニューヨークのマンハッタンにあるニューヨーク美術学校(School of Visual Arts)イラストレーション科の学士を得て卒業。

 

KAWSはゲルハルト・リヒター、クレス・オルデンバーグ、チャック・クローズなどの美術家から影響を受けている。

 

その後、フリーランスのアニメーターとしてディズニーで働く。『101匹わんちゃん』『ダリア』『ダグ』などのTVアニメシリーズの制作で背景の絵を描く仕事をしていた。その後、グラフィティ・アーティストへの道へと進む。

グラフィティ・アーティストとして活動


グラフィティ・アーティストとしてのキャリアは、ジャージーシティの子ども時代にまでさかのぼる。1990年代初頭にニューヨークに移ったあと、グラフィティ活動をはじめる。

 

KAWSとして本格的に活動をはじめたのは1999年ころからで、壁や貨物列車に「KAWS」と名前を書き残していた。「KAWS」というタグを選んだ理由は文字がそのまま絵になる方法を好きだったからである。

 

なお、このころにのちにトレードマークとなる、二本の骨が交差し、目がバッテン印のソフトな印象のスカルマークを創造したという。

 

しかし、その後すぐに「KAWS」というシンプルなタグから、バスの待合所や公衆電話ボックスの広告に漫画のようなキャラクターを書き加えるなど、企業広告を改変して全く違う意味にする手法「Subvertising(サブバータイジング)」を使う独特なスタイルに移行していった。

 

のちに、KAWSはこれらの初期サブバータイズ作品をスクリーンプリント・リトグラフにして複製している。サブバータイズ作品における代表作は、緑色の目がバッテンのキャラがスーパーモデルのクリスティー・ターリントンを抱いているカルバン・クラインの広告である。

KAWSがSubvertisingを行ったカルバン・クラインの広告。
KAWSがSubvertisingを行ったカルバン・クラインの広告。
そのほかのサブバータイジング作品。JUICEより。
そのほかのサブバータイジング作品。JUICEより。

KAWSの知名度が上がるにつれて、書き換えられた広告はすぐに探され盗まれるようになった。

 

ブルックリンでのグラフィティにおける活動は2003年ころまで続いた。KAWSはアメリカだけでなく、パリ、東京、ロンドン、ベルリンなど世界中でサブバータイジングをしている。

 

ほかのアーティストとKAWSが異なるのは、初期美術キャリアにおいてギャラリーで作品発表することを好まなかったことだろう。KAWSは作品を公共空間で展示し、また作品を大量量産することのメリット(より多くの人に自分の作品を見てもらえること)を十分に認識していた。

 

グラフィティ・アーティストのころについてKAWSは当初は政治的な動機もあったが、それおよりも単純に自己発信のモチベーションが強かったという。

 

「グラフィティをしているときの自分の考えは「ただ知ってもらいたい」だけです。世界でこの視覚的言語を使って知ってもらいたい。人々に届かないのであれば、絵を描くことは私にとって何も意味がありません」と話している。 

グラフィティ・アーティストとして活動していたころのKAWS。

目がバッテンのキャラ「コンパニオン」


KAWSが繰り返し利用する同じキャラクターたち言語や文化を超えて世界中で受け入れられている。彼のキャラクターのルーツは1990年初頭の初期キャリアであるグラフィティ・シーンまでさかのぼることができる。

 

1999年、KAWSはカルト・トイとストリートウェアの日本のブランド会社バウンティー・ハンターからのオファーで日本を訪れる。このときにKAWSは最初の限定版ビニールトイ「コンパニオン」を制作し、これが大ヒットとなった。500体制作し、すぐに売り切れた。コンパニオンの身体は明らかにミッキー・マウスから影響を受けていることがわかる。

 

その後、コンパニオンはKAWSの作品で繰り返し現れるキャラクターになった。

バウンティー・ハンターと制作した最初のトイ作品「コンパニオン」。
バウンティー・ハンターと制作した最初のトイ作品「コンパニオン」。

KAWSによれば、おもちゃ作成は立体作品の作成入口であり、また、おもちゃを作るというアイデアが浮かんだときに、自分の作品を立体的に見ることができる唯一の方法という大きなメリットを見つけたという。

 

その後、KAWSの立体作品はおもちゃからさまざまな素材へ発展する。顔を両手で覆い隠したコンパニオンは、2012年のメイシーズ・サンクスギヴィング・デイ・パレードで巨大風船として使われた。

2019年3月には、アート・バーゼル香港の開催期間にあわせて長さ121フィート(約37メートル)もあるバルーン版コンパニオンを制作し、香港のビクトリア・ハーバーの海上に浮かべた。

 

また、同年1月に40トンの重さで固定された「 KAWS: HOLIDAY」と呼ばれるコンパニオンが台北の国立中正に設置されて話題を呼んだ。

2019年3月22日香港ビクトリアハーバーに設置されたバルーン版コンパニオン。TIMEより。
2019年3月22日香港ビクトリアハーバーに設置されたバルーン版コンパニオン。TIMEより。
2019年1月に台北国立中正記念堂に設置されたコンパニオン。
2019年1月に台北国立中正記念堂に設置されたコンパニオン。

KAWSの日本での展示


KAWSによる巨大な彫刻プロジェクト「カウズ:ホリデイ(KAWS:HOLIDAY)」が、日本で記載。2019年7月18日から24日までの約1週間。場所は富士山の麓に位置する「ふもとっぱらキャンプ場」で開催された。詳細は公式サイトへ。

アート・トイの成功でファッション業界へ進出


それ以来、KAWSの人気は美術業界よりもどちらかといえばファッション業界で注目を集めはじめる。ユニクロ、ナイキ、ジョーダンなどの世界最大のファッションブランドとのコラボレーション活動が始まる。

 

ほかにも『ア・ベイシング・エイプ』『サンタスティック!』『メディコム・トイ』など、多くの日本のアパレルブランドとコラボレーション活動をしている。

 

また、メディコム・トイとの共同プロジェクトブランドで自身のファッションブランド『オリジナル・フェイク』を立ち上げ、東京の青山を拠点にし、おもちゃやファッションの制作を行っている。同ブランドは創立7周年となる2013年5月をもってクローズした。

 

2013年の『MTVビデオミュージック賞』で、KAWSは月面旅行者を模したデザインを発表、また『The New Yorker』『Clark Magazine』『I-D』などさまざまな雑誌カバーのデザインをした。ほかには、トワ・テイ、ザ・クリプス、カニエ・ウェストなどミュージシャンのカバーアートもした。

 

2014年にKAWSは長年の親友であるファレル・ウィリアムスと、コム・デ・ギャルソンの香水『Girl』のボトルデザインのコラボレーションを行う。

 

2016年にKAWSはユニクロとコラボレーションを行い「UT」として、Tシャツやアクセサリーを販売し、世界中で大ヒットとなった。さらに、2018年11月には世界中で大人気のテレビ番組「SESAME STREET(セサミストリート)」とのコラボレーション「KAWS × SESAME STREET」としてスペシャルコレクションをユニクロから発売した。

 

2019年6月、中国でUNIQLO x KAWSのコラボTシャツの争奪をめぐる大規模争奪騒動が発生。アリババのECサイトで商品の販売が始まったが、瞬く間に売り切れになったあと、翌朝の実店舗に広がる。実店舗にオープン前から客が集まり、開店と同時になだれ込み商品の争奪合戦が繰り広げられた。

2010年代後半から美術業界から注目を集める


KAWSは2000年代にはすでにそれなりに成功していたアーティストであり、現代美術シーンにおいても名は知られていたが、マーケットで急激に価格が高騰しはじめたのは、2010年代後半からである。

 

2017年5月、ニューヨーク近代美術館は200ドルのKAWS限定アクションフィギュアを発売。また、イギリスのオークションハウス、フィリップスで2011年に制作したKAWSのブロンズ製『コンパニオン』が41万1000ドルで落札された。

 

2019年のアートネット・インテリジェンス・レポートによれば、2017年の彼の平均販売価格は42,272ドルから82,063ドルへとほぼ倍増したという。

 

2018年11月には、5つのKAWS作品が100万ドル以上で売れており、年間を通して彼の作品はオークションで3380万ドル以上の売上を記録している。

2018年10月5日に開催されたロンドン・サザビーズ現代美術絵部ニングセール。オークション会場からKAWSの2008年作品『AGAIN AND AGAIN』を落札しようとする入札者たちの熱気が伝わってくる。

 

25万ポンドから300万ポンドの間になると予想されていたが、最終的には103万ポンドで落札。2019年4月の香港サザビーズのオークションで1480万ドルで作品が落札された。この落札価格は最低見積もりの約20倍だったという。

 

KAWSがグラフィティ・アーティストから現代美術家まで成長し、急激に価格が上昇しはじめた背景には、10年以上長年にわたって活動してきたエマニュエル・ペロタン・ギャラリーと、優良株アーティストのジョージ・コンドとともに独占的に紹介してきたSkarstedtギャラリーの存在は欠かせない。

 

特にアジアにおいてここまで人気が高まったのは、ソウル、香港、東京などアジアにもギャラリーを持つペロタンの力によるところが大きいのではないだろうか。

 

Skarstedtギャラリーは昨年10月にニューヨークで初めてKAWSの個展を開催し、今年の11月にはロンドンでKAWSの個展を開催する予定だ。

KAWSの美術史的文脈


キュレーターで美術史家のマイケル・アウプによって「クレメント・グリーンバーグの最悪の悪夢」として説明されているKAWSは、ニューヨークのアート・ワールドにおいて恐ろしい存在とみなされている。

 

多くの人はジャン=ミシェル・バスキアキース・ヘリングのようなグラフィティ・シーン、もしくは、製作品の時代における芸術の可能性について本能的に理解していたアンディ・ウォーホルジェフ・クーンズのようにポップ・アーティストと同じ文脈としてKAWSを認識している。

 

なお、KAWS自身は彫刻家のクレス・オルデンバーグやポップ・アーティストのトム・ウェッセルマン、村上隆などから影響を受けており、後者の点からみればKAWSは「アクセプタンス&クロスオーバー・プロジェクト」文脈の芸術家とも評価されおり、実際、村上隆のようなカートゥーンキャラを利用して、「ハイ」と「ロウ」の境界が曖昧な作品も制作している。

《KIMPSONS》 painted in 2005.
《KIMPSONS》 painted in 2005.

なかでも2012年のメイシーズ感謝祭パレードの一環として制作されたコンパニオンの巨大風船は、ミッキーマウスやスヌーピー、キティ、スパイダーマン、ソニック・ザ・ヘッジホッグなどのポップカルチャーのキャラクターと一緒に並んでパレードを行っており、KAWSはアートを大量消費社会の風景に溶け込むフラットな能力を証明したといえる。

追加すると、KAWSはミッキー・マウスやミシュランマン、スヌーピー、スポンジ・ボブなどのキャラクターを書き換えた作品も制作している。

 

KAWSは「人々の生活の中にカートゥーンがどのように入り込んでいるか不気味にかんじた。その衝撃は習慣的な政治と比較するほどのものだ」と話している。

 

ストリート・アート、ポップ・アート、スーパーフラット、ファインアートを踏まえ、KAWSという芸術家をどのような美術的文脈に位置づけていていくかは、アートシーンと美術史家たちにおける大きな課題といえる。

SNSで成功したアーティストの1人


KAWSはソーシャルメディアをうまく活用している現代美術家でもある。2019年6月18日時点で#kawsのハッシュタグがあるInstagramの投稿は90万件以上存在している。なお、ジェフ・クーンズが30万件、ダミアン・ハーストが19万2000件である。

 

また、アート・マイアミ2019期間中に会場内で撮影されてInstagramにアップロードされた作品を解析すると、KAWSが最も多かったという。

 

専門家によれば、これはKAWSの明るいポップ・アートスタイルがオンライン上でも忠実に再現されている事実に部分的に起因する可能性があると推測しているが、この人気はストリート・アーティストとしてのKAWSのルーツにも起因している。

展覧会


KAWSの主要な個展は、2004年から2008年にかけてオハイオ現代美術館からはじまり全米やヨーロッパを巡回した『Beautiful Losers』や、2012年にジョージア州アトランタのハイ美術館で開催された当時最大の美術館における個展などがよく知られている。

 

■2016年

・「Where The End Starts」:モダン・アート・ミュージアム・オブ・フォートワース、テキサス州

・個展:余徳耀美術館[yuz museum]、上海

・個展:ヨークシャー彫刻公園、ウェスト・ヨークシャー

KAWSの図録、グッズ








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