黒人警察官の皮肉 / Irony of Negro Policeman
白人社会における黒人の抑圧を皮肉交じりに描写
概要
作者 | ジャン=ミシェル・バスキア |
制作年 | 1981年 |
メディウム | 木製パネルにアクリル、オイルスティック |
ムーブメント | 新表現主義 |
サイズ | 122 cm × 183 cm |
所蔵者 | 前澤友作 |
《黒人警察官の皮肉》は、1981年にジャン=ミシェル・バスキアによって制作された絵画。アイロニーを含みながら「黒人警察官」を描いている。
絵画に描かれているミッドナイトブルーの警察官の制服を着た黒人男性は、全体主義的体制化における黒人の大衆を表現したものだとみなされている。
警察官の頭を覆うシルクハットは檻のようなに見えるが、これは当時のアメリカにおける黒人の抑圧された姿を表現したものだという。また、白人社会における黒人警察官がいかに抑圧されているかを表してもいる。
バスキアはハイチ出身である自身の伝統を生かして、ハイチのブードー教において、死の力を象徴するロア(精霊の総称)のゲデ族のサムディ男爵のシルクハットを描いている。
「人種」は、バスキアの作品の中で最も重要なテーマのひとつである。彼は一貫して、黒人の姿を作品の中心に据えてきた。「黒人は決して現実的には描かれていない...つまり、モダンアートでさえ十分にまだ描かれていない」。
しかし、バスキアは黒人警察官の横に「IRONY OF NEGRO PLCEMN」というタイトルをつけることで、抑圧された者(黒人)が抑圧者(警察官)の制服を着ているという皮肉を示唆している。
作家のジャナ・エバンス・ブラジエルは次のように述べている。「"policeman "という単語の母音が省略されていることから、"Negro Policeman "は単なる配置(機械の中の部品や歯車)であり、また配置である以上、交換も可能であり、システムにとって彼は消耗品である」。
《黒人警察官の皮肉》は、バスキアが白人警官を威嚇的に描いた《ラ・ハラ》(1981年)を制作した年と同じ年に描かれた。しかし、威嚇描写は正反対となっている。
《黒人警察官の皮肉》における黒人警察官は、偽善を象徴するマスクのような顔で背景が白抜きされているの対し、《ラ・ハラ》では白人警察官の残忍な骨格が暗号のようなメッセージで伝えられている。
1981年に、バスキアはストリート・アーティストからギャラリー・アーティストへと転身し、ニューヨークのアニナ・ノセイ・ギャラリーに参加。ノセイはバスキアにギャラリーの地下にスタジオスペースを提供し、そこで、バスキアは《黒人警察官の皮肉》などのような最も重要な作品を制作した。
この作品は、2012年のフィリップス・コンテンポラリーアートオークションで1260万ドルで落札された。
■参考文献
・https://en.wikipedia.org/wiki/Irony_of_Negro_Policeman、2021年12月2日アクセス