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【作品解説】ジョゼッペ・アンチンボルド「ウェルトゥムヌスとしての皇帝ルドルフ2世像」

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ウェルトゥムヌスとしての皇帝ルドルフ2世像 / Vertumnus

作者 ジョゼッペ・アンチンボルド
制作年 1591年
メディウム 油彩
所蔵者 スコークロスター城

概要


《ウェルトゥムヌスとしての皇帝ルドルフ2世像(ウェルトゥムヌス)》は、1591年にジュゼッペ・アルチンボルドが制作した油絵。複数の果物や野菜、花を組み合わせて、神聖ローマ皇帝ルドルフ2世の肖像を表現している。

 

瓢箪、梨、りんご、さくらんぼ、ぶどう、小麦、アーティチョーク、豆、えんどう豆、トウモロコシ、玉ねぎ、キャベツ箔、栗、イチジク、マルベリー、プラム、ザクロ、各種かぼちゃ、オリーブなど、あらゆる季節の草花や果物で皇帝像が制作されている。

 

ぱっと見るとユーモラスな作品だが、実は、特に果物、野菜、花の選択に関して、意図的に政治的メッセージが込められている

 

たとえば、耳はトウモロコシになっているが、トウモロコシは当時、新大陸産の作物だった。

 

ルネサンス時代、風変わりなものや外国の高級食品のコレクションは、金持ちのステータス シンボルだった。メディチ家は、植物、食物、動物 (生死を問わず) やその他の物質主義的な物を世界中から集めて、富と自分の勢力範囲を誇示した。

 

そのようなこともあり、これらの当時における特定の国外の作物を描くことは、ルドルフ2世の当時の権力と富を表現していることは明らかである。アルチンボルドが耳にトウモロコシを選んだのは、鋭い政治的決定とみなされる。

 

 

 

ウェルトゥムヌスは完成後、ルドルフ2世に贈られた。三十年戦争の後、作品の所有権はスウェーデン軍に移った。その後、美術史家はウェルトゥムヌスの行方を見失ったが、1845年にスウェーデンのスコークロスター城で再発見され、現在に至っている。

歴史的背景


神聖ローマ皇帝ルドルフ2世


神聖ローマ帝国の皇帝だったルドルフ2世がハンガリーとボヘミアを統治した29年間は、「ルドルフ・プラハ」と呼ばれ、芸術が賞賛された時代だった。かつてないほどの芸術鑑賞のムーブメントが起こり、芸術環境の育成はルドルフ2世自身が推し進めたものだった。

 

このように芸術土壌があったからこそ、アルチンボルドは宮廷で活躍できたのであり、特にアルチンボルドは前例のないユニークな作風で知られるようになった。

 

アルチンボルドの『ウェルトゥムヌス』に対する最初の印象は、周囲からジョーク作品のように受け止められたが、アルチンボルド自身は冗談も含みながらも、それが作品の意図ではなかった。

 

むしろ、果物や野菜を意図的に使うことで、「ルドルフ2世という支配者の世界を支配する力のメタモルフォーゼ」を表現する意味があった。

 

ウェルトゥムヌスは、ローマ神話に登場する果樹と果物の神で、ローマでは植物を転じて果実に、果実が転じて木になる過程を促進するメタモルフォーゼの神と解釈されていた。

 

ウェルトゥムヌスの背後にいる皇帝の後援者、権力のプロパガンダとして機能する特定の果物の選択、そしてヨーロッパ中に配布されたウェルトゥムヌスの複製は、すべて政治的寓意であるという。

 

ルドルフ2世の肖像画には、ルドルフ2世がその治世に象徴すると信じていた、自然、芸術、科学との完璧なバランスと調和が描かれている。

 

この肖像画は、ルネサンス期の謎解きやパズル、奇抜なものへの憧れを表現している。ルネサンス期のエリートたちの間では、ユニークで魅力的な作品を求める傾向があり、アルチンボルドは、その独特のスタイルで見る者を魅了する絶好の機会を得たのである。

 

アルチンボルドはもともと伝統的な宗教画を描いていたが、それらは注目を集めることなく、オブジェを組み合わせた人物の頭部を描いたこの肖像画は、同時代の人々から大きな賞賛を浴びた。


■参考文献

https://en.wikipedia.org/wiki/Vertumnus_(painting)、2022年10月11日アクセス



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