ドラ・マールと猫 / Dora Maar With Cat
100億以上する猫と女性のペアリング作品
概要
「ドラ・マールと猫」は、1941年にパブロ・ピカソによって制作された油彩画。描かれている女性はピカソの愛人ドラ・マールで、マールの肩近くの椅子の上に小さな黒猫が描かれている。この作品は世界で最も高価格で一般市場で取引されている。
ピカソは55歳のとき、29歳のドラ・マールと恋愛関係になるや、すぐに彼女と同棲しはじめた。この絵は1941年に制作されたもので、その年は、ナチスがフランスに侵攻した年だった。
多重のレイヤーと豊かな筆使いで、多面的に構成されキュビスム様式で描かれた彼女の身体や表情は、このポートレイトに威風堂々した彫刻的な質感を与えている。
ピカソは以前に「アフガニスタンの猫」という絵を描いており、本作において、マールの魅力や気性とアフガニスタンの猫の性格をリンクさせたものだといわれている。ヨーロッパの芸術史において猫と女性のペアリングは、謀略的な女性や性的アピールを暗喩したものである。たとえばマネの「オリンピア」が代表的な猫と女性のペアリング絵画といえる。
また、マールの長い指ととがった爪にも注目したい箇所で、マールのよく手入れされた手は、マールの最も美しい身体パーツであり、また攻撃性を意味するものである。
1940年代、この絵はシカゴのコレクターであるリーとメアリー・ブロック夫妻に購入された。彼らは1963年にこの絵を売却し、その後、21世紀の現在までアートマーケット上に流通している。
2005年から2006年まで、「ドラ・マールと猫」はシカゴのジェラルド·ギッドウィッツが所有し、ロンドンや香港、ニューヨークのササビーズの展示の一部として広く一般公開されていたが、2006年5月3日のサザビーズの「モダニズム/印象派」のオークションで売りだされ、オークション史上最高価格を付けた。2012年版フォーブス世界長者番付では153位(資産64億ドル)のグルジアの富豪ビジナ・イヴァニシヴィリが,2006年に9520万ドル(108億円)で購入した。