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【作品解説】アンリ・マティス「赤のアトリエ」

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赤のアトリエ / L'Atelier Rouge

マティスの初期の集大成的な作品


アンリ・マティス「赤のアトリエ」(1911年)
アンリ・マティス「赤のアトリエ」(1911年)

概要


作者 アンリ・マティス
制作年 1911年
メディウム 油彩、キャンバス
サイズ 181 x 219.1 cm
コレクション ニューヨーク近代美術館

《赤のアトリエ》はマティスの初期の集大成的な作品である。フォーヴィズム、印象派、後期印象派と、これまでマティスがたどってきた芸術スタイルを融合させたうえで、海外旅行で見たさまざまな美術や文化的要素を上書きして表現しています。

 

この作品は、パブロ・ピカソ、マルセル・デュシャン、アンディ・ウォーホル作品とならんで、全近代美術作品で最も影響力のある作品500の5位にランクインしています。

 

キャンバス全体を赤で占有した『赤のアトリエ』は、のちにマーク・ロスコやバーネット・ニューマンなどの抽象表現主義のカラーフィールド・ペインティングの作家たちに多大な影響を与えました。

この絵画のポイント

  • 最も影響力のある近代美術作品500で5位
  • 初期マティスの集大成的な作品
  • カラーフィールド・ペインティングの先駆け

 

構図


「赤いアトリエ」は、1909年にマティスが設立したアトリエ内部を描いた室内風景画です。画面全体を錆びた赤色で力強く塗りつぶすように描いているのが特徴です。

 

室内家具は、広大な赤い空間から浮き上がるように輪郭線が黄色で描かれ、また、平面的な赤い面の上に遠近感や奥行きを出すよう角度を付けています。平面的に塗られた赤い絵具と対照的に、室内家具は白、青、緑などの絵具を使っており画面全体における色のバランスを意識しているのがわかる。

 

絵画や装飾品などは、ひとつひとつしっかり描かれているが、椅子やテーブルなどの家具に関しては、黄色い輪郭線だけで単純化されている。絵画や装飾品はマティスの初期作品のことを暗示し、黄色い輪郭線だけの単純化した家具は現在のマティスを暗示して、過去と現在のギャップを強調していると見られる。

 

画面の左下には卓上があるが、鑑賞者が部屋の隅から見下ろしているかのように、卓上の端がはみ出すように描かれている。画面中央には大きな古時計が配置されているが、これはスタジオ内の空間的不連続性のバランスと調和をもたらすための中心軸の機能を果たしている。

「赤いハーモニー」の発展型作品


キャンバス全体を占有する赤い面は、1908年のフォーヴィスムの代表作品の1つ《赤いハーモニー》を基盤としている。また、消失点や遠近法が曖昧な印象派の影響を受けた絵画になっているが、これはマティスが構図のバランスと調和を意識した上で排除していることは明らかでる。

アンリ・マティス「赤いハーモニー」(1908年)
アンリ・マティス「赤いハーモニー」(1908年)

ゴッホの「夜のカフェ」から着想


大胆な原色の色使いや部屋を見下ろす視点は、後期印象派のフィンセント・ファン・ゴッホからの影響が大きく、特に《夜のカフェ》の構図を参照にしているとおもわれる。《赤いハーモニー》との大きな違いは、ゴッホの《夜のカフェ》で見られる角度だろう。

フィンセント・ファン・ゴッホ「夜のカフェ」(1888年)
フィンセント・ファン・ゴッホ「夜のカフェ」(1888年)

制作前に海外旅行をしている


またマティスは《赤のアトリエ》を制作する前に重要な旅をしている。ミュンヘンでイスラム美術の展覧会を訪れ、またスペインのグラナダ、コルドバ、セビリアのムーア人の都市や、ロシアのモスクワやサンクトペテルブルクを探訪している。絵画のトーンや装飾的モチーフは、当時の海外旅行で出会った美術などから影響を受けているとおもわれる。

カラーフィールド・ペインティングの先駆け


キャンバス全体を赤で占有した《赤のアトリエ》は、のちにマーク・ロスコバーネット・ニューマンなどの抽象表現主義のカラーフィールド・ペインティングの作家に多大な影響を与えている。

 

1949年にマーク・ロスコはニューヨーク近代美術館で見たアンリ・マティスの《赤いスタジオ》に感銘する。この出来事はロスコの晩年の抽象絵画のインスピレーション元のひとつとなった。

マーク・ロスコ『No.3/No.13 (Magenta, Black, Green On Orange)』(1949年)
マーク・ロスコ『No.3/No.13 (Magenta, Black, Green On Orange)』(1949年)



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