山本タカト / Takato Yamamoto
平成耽美主義
概要
生年月日 | 1960年1月15日 |
職業 | 画家、イラストレーター |
居住 | 鎌倉 |
山本タカト(1960年1月15日~)は、日本の画家、イラストレーター。
日本では浮世絵版画、象徴主義や唯美主義などの影響下で描いた独自の耽美な作風で知られている。イラストレーションの仕事のかたわら、自身のスタイルを「平成耽美主義」と銘打ち、現在は画家としても活躍している。
画集そのものを表現媒体と捉えて作品制作することを意識しており、10年間に5冊の画集を刊行。併せて個展を開催するスタイルがほかの美術家たちと異なる。
作品集解説
略歴
若齢期
1960年秋田生まれ。現在の作風にルーツとなるのは10代の頃に出会った吸血鬼。
吸血鬼をスタート地点として、その後、オーブリー・ビアズリーやグスタフ・クリムトなどの19世紀末の美術、なかでも象徴主義、デカダンス、唯美主義といった世紀末美術に関心を深めていく。
その流れで、エドガー・アラン・ポーやボードレールなどの象徴主義文学にも触れるようになる。高校時代のバイブルは『象徴派とデカダン派の美術』だった。
マンガでは萩尾望都の「ポーの一族」に影響を受ける。現実的な大人の社会に殺伐さを感じていた時期で、少年少女であり続けるバンパネラというロマン主義的な存在は魅力的だったという。
1979年に東京造形大学に入学し、現代美術に関心を向ける。特にジャスパー・ジョーンズやアンディ・ウォーホルなどのポップ・アートに刺激される。入学して2年間はとくに親しく付き合う人間もできなかったため、学校へ行っても講義に出るだけで、ほとんどアトリエに近づくことはなかったという。3年になり抽象絵画コースを選択したが、抽象絵画の反動で趣味でイラストレーションを描き始める。
商業広告時代
1983年に大学を卒業した後、就職はせずカレー屋でアルバイト生活をする。お金が貯まると個展をしていたが特に絵の評価を得られることはなかったという。反対にアルバイトでしていたイラストレーションの仕事が、富士通のCMで使われた絵をきっかけに、たくさん舞い込むようになり、本格的に広告のためのイラストレーターの職に就くことになる。
イラストレーションのおかげで生活は楽になったものの、本来の自分の描きたかったものと大きな隔たりがあり、不本意な作品が多くなっていく。また90年代に入ってバブルが崩壊して、広告の仕事が激減し始める。ちょうどそのころに澁澤龍彦の展覧会を鑑賞して高校時代に好きだった19世紀末のビアズリーとかクリムトや浮世絵をふと思い出すようになる。
クライアントの要求に応えるように描き続けていたが、商業広告の生活に嫌気が差し始めていたことや高校時代に好きだった絵の欲求が重なったこともあって、好きな絵を一人で描き続けるようになる。これが「平成耽美主義」というスタイルの始まりであり、小説の挿絵の仕事を始めるようになり、現在にまでいたる。
平成耽美主義
平成耽美主義を始めたころはまったく仕事がこなかったものの、1995年にクリエイションギャラリーG8で開催した東京イラストレーターズ・ソサエティ主宰の「一冊」展をきっかけに、作品集や次の個展の打診が来るようになる。
また、耽美小説、幻想小説、官能小説、時代小説などの挿絵のほか、文芸誌や単行本などの表紙絵などの仕事がたくさん舞い込むようになる。
依頼させる挿絵を描く傍ら、「平成耽美主義」と銘打ってオリジナルの絵を描きため、1998年に最初の画集である「緋色のマニエラ」を出版。徐々に支持者も増えて、画集そのものを表現媒体と捉えて作品制作することを意識し、その後、10年間に5冊の画集を刊行。併せて個展を開催するスタイルが定着した。
美意識
- 地を這う樹木の根の形状のグロテスク性。
- 亡霊との戯れ。時空を超えた生と死のやりとりで性的なものと結びつく。
- 大正から昭和初期頃の雰囲気のある和洋折衷の家屋。さらにそれらが廃墟と化したもの。そこに自然と人造物、生成と崩壊、生と死のドラマを感じる。
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相反する性質が混在している状態、あるいはそれが完全に融合していてどちらかであってどちらでもな状態。アンドロギュノス、変曲点、境界線上、夕暮れの朧、内と外を曖昧に隔てる窓など。
- 中性的な美少年。
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黒色。あらゆる色相を溶かしこんでいる故に様々な表情を見せる。精神状態をデリケートに反映させる性質があり、一種の鏡のようであり、高貴にも卑俗にもなる。
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髑髏。山本作品における重要なモチーフ。
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浮世絵の線。逆に一点透視画法の絵画空間が基本的に苦手。(幻色のぞき窓より)
技法
絵を描く際は、まず、おおまかなラフを描き、ラフをもとに下絵を起こす。次に下絵の紙の裏側全面を鉛筆で塗り、下絵と本番用の紙を重ねて下絵の線をなぞり、本番の紙になぞった線を転写させる。そして本番では、面相筆とペンで線を描き、リキテックスの絵の具で色塗りをして完成させる。結果として1点を制作するのに4回描くことなり、下描きに1日、トレースに1日、色塗りに2〜3日の作業時間を費やす。失敗したときは、基本的にホワイト修正はせず、白は紙の白地を活かするため最初から描き直す。
浮世絵の線に影響を受けており、一点透視画法の絵画空間が基本的に苦手で描かない。浮世絵のテクスチャーや肌合い、和紙の肌合いなどが表現媒体としてぴったりだったという。
シュルレアリスムにおけるオートマティスム(自動記述)までいかないが、比較的に無意識的に描いている。最初のモヤモヤとした不定形の塊が湧き出るような感じがあり、そのうち鉛筆の先をクネクネ動かしていると増殖的に細部の形が現れ、意識は絵の内容から離れがちで、手は勝手に作業している感覚になるという。
初期は主題を重視して絵を書いていたが、現在は造形の方を重視して絵を描いているという。
年譜表
年 | ||
1960年 |
1月15日。秋田県で生まれる。 |
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1983年 |
東京造形大学絵画科卒業 |
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1991年-93年 | 「浮世絵ポップ」様式を試みる | |
1994年頃より | 「浮世絵ポップ」様式を発展させ洗練させた「平成耽美主義」様式を打ち出す | |
1998年 |
「山本タカト展〜平成耽美館」(クリエイションギャラリーG8、銀座) 山本タカト画集『緋色のマニエラ』(トレヴィル刊) |
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2001年 |
「山本タカト展〜瑠璃色覗窓」(HBgallery,表参道) デジタル作品集『美少年の夜』『美少女の夜』『怪奇の夜』(イースト・プレス刊) 『復刻版・緋色のマニエラ』(エディシオン・トレヴィル刊) |
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2002年 |
『山本タカト展〜ナルシスの祭壇』(スパンアートギャラリー、銀座) 山本タカト画集『ナルシスの祭壇』(エディシオン・トレヴィル刊) |
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2003年 |
『山本タカト展〜月蝕小夜曲』(タコシェ、中野) |
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2004年 |
『山本タカト展〜ファルマコンの蟲惑』(スパンアートギャラリー) 山本タカト画集『ファルマコンの蟲惑』(エディシオン・トレヴィル刊) |
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2005年 |
「山本タカト展〜闇化粧」(モンドビザーロ、ローマ) |
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2006年 |
「山本タカト展〜月逍遊戯」(夜想プロデュース、ルーサイト・ギャラリー 浅草橋) 山本タカト画集『殉教者のためのディヴェルティメント」(エディシオン・トレヴィル刊) |
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2006-2007年 |
「山本タカト展〜禁断」(モンドビザーロ、ローマ) |
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2007年 |
『再復刻版・緋色のマニエラ』(エディシオン・トレヴィル刊) 『復刻版・ナルシスの祭壇』(エディシオン・トレヴィル刊) 『復刻版・ファルマコンの蟲惑』(エディション・トレヴィル刊) 特装版『山本タカト集成巻之壱』(エディション・トレヴィル刊) |
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2008年 |
『山本タカト展〜吸血鬼逍遥』(夜想プロデュース、パラボリカ・ビス、浅草橋) 『山本タカト展〜奇想と耽美10年の軌跡」(紀伊國屋画廊、新宿) 『山本タカト展〜ヘルマフロディトゥスの肋骨』(ゴタンダソニック、ゴタンダ) 山本タカト画集『ヘルマフロディの肋骨』(エディション・トレヴィル刊) |
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2009年 |
『少女幻想奇譚。その存在に関するオマージュ』(Bunkamura Gallery、渋谷) 『アリス百花幻想』(スパンアートギャラリー、銀座) 『ARTTAIPEI2009』(台北世界貿易中心、台北)
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2010年 |
「妖・OYOZURE」アートフェア東京 「巧術 KOH-JUTSU」(スパイラルガーデン、南青山) 「少女ファンタジー〜幻想の随」(スパンアートギャラリー、銀座) 「山本タカト展〜キマイラの墓標」(紀伊國屋画廊、新宿) 「山本タカト展〜キマイラの心臓」(マリアの心臓、渋谷) 「背徳者たちが誘う聖なる禁断の世界へ」(BunkamuraGalley、渋谷) |
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2011年 |
「邪神宮〜深〜 The Deep Exibition of Ctchulhu」(スパンアートギャラリー、銀座) 「ART HK 2011」(香港) 「巧術 其之弐〜手帳」(スパイラルガーデン、南青山) 「ART TAIPEI 2011」(台北世界貿易中心、台北) 「少女幻想〜少女を巡る幻想」(スパンアートギャラリー、銀座) 特装版『山本タカト集成 巻之弐』(エディション・トレヴィル刊) |
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2012年 |
「巧術 其之参〜蟲惑」(スパイラルガーデン、南青山) 「『Another』へのオマージュ〜眼球と少女たち〜」(Bunkamura Gallery 渋谷) 「山本タカト展〜ネクロファンタスマゴリア」(アセンス美術、心斎橋/紀伊國屋画廊、新宿) 山本タカト画集『ネクロファンタスマゴリア』(エディション・トレヴィル刊) |
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