回顧的女性胸像 / Retrospective bust of a woman
ミレーの「晩鐘」から着想を得た彫刻作品
概要
作者 | サルバドール・ダリ |
制作年 | 1932年 |
メディウム | ブロンズ像 |
サイズ | 73.9 x 69.2 x 32 cm |
コレクション | ニューヨーク近代美術館、諸橋近代美術館 |
《回顧的女性胸像》は1933年にサルバドール・ダリによって制作された彫刻作品。超現実オブジェ。1977年にブロンズ像として復元され12点つくられている。諸橋近代美術館で鑑賞することが可能。
ダリによれば、農作業をする夫婦が、教会から聞こえる夕刻を知らせる鐘に合わせて祈りを捧げているミレーの《晩鐘》から着想を得たという。
若い女性の頭部には、インク壺を乗せたパンが置かれている。このモチーフと構図は《カタルーニャのパン》とほぼ同じであるが、二人の人物が描かれており、この二人がミレーの《晩鐘》に描かれている人物である。なおパンは《カタルーニャのパン》と異なり、柔らかくなっている。
多くの人はミレーの晩鐘の絵に対して普通はセンチメンタルなものを感じるかもしれないが、ダリは少し異なる。
ダリ独自の解釈によれば、胸に祈りを捧げて頭を垂れている女性は、無意識の性的欲求を示しており、カマキリのポーズを示して男性を襲おうとする女性の性的パワーの表れだという。ダリは女性の中に眠る官能性に秘められている危険性をカマキリに関連づけた。
一方の男性は帽子で股間を隠しており、頭をうなだれているが、これは男性の性的抑圧、または性的不安を表しているものだという。インク壺をのせたパンが柔らかくなっているのもそのためである。
首にはトウモロコシと走馬灯が首飾りのようにかけられている。これは「ゾートロープ」とよばれるもので、走馬灯と原理は同じだが、ゾートロープは回転させるとアニメーションのように連続した動きになるヨーロッパのおもちゃである。この首飾りに描かれている男性はダリに似ている。
また、女性の額にはダリにとって「死」を象徴するアリが群がっている。