バンクシー / Banksy
世界で最も注目されているストリート・アーティスト
概要
本名 |
不明 |
生年月日 | 不明 |
出生地 | 不明 |
タグ | グラフィティ、ストリート・アート、ブリストル・アンダーグラウンド、スカルプチャー、風刺、社会批評 |
公式サイト | http://banksy.co.uk |
バンクシーはイギリスを基盤に活動している匿名の芸術家。現在は世界を舞台に神出鬼没を繰り返しながら活動することが多い。アート・ワールドにおいてバンクシーは、おもにストリート・アート、パブリック・アート、政治活動家として評価されている。ほかに映画制作もしている。
ステンシル技法を使用した独特なグラフィティ絵画とダークユーモアが渾然一体となって表現されるのがバンクシー作品の特徴である。それは風刺的であり攻撃的なメッセージである。
政治的であり、社会的な批評性のあるバンクシーの作品は、世界中のストリート、壁、橋に描かれている。
バンクシーの作品は芸術家と音楽家のコラボレーションが活発なブリストルのアンダーグラウンド・シーンで育まれた。そのスタイルは、1981年にパリでステンシル作品を始めた3Dとよく似ていることが指摘されている。バンクシーによれば、のちに音楽グループ「マッシヴ・アタック」のメンバーとなった3Dから影響を受けているという。
バンクシーは、自身の作品を街の壁や自作の小道具的なオブジェなど誰でも見える公共空間に展示する。ストリート・アートの複製物や写真作品を販売することはないが、アートオークション関係者はさまざまな場所に描かれた彼のストリート・アートを販売しようと試みており、落書きの除去に関する問題は落札者の手に委ねようとしている。
バンクシーの最初の映画は、「イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ」は「世界で最初のストリートアートパニック映画」とキャッチをうち、2010年のサンダンス映画祭で公開された。2011年1月、バンクシーはこの映画でアカデミー長編ドキュメンタリー映画賞にノミネートされた。2014年バンクシーは「2014年ウェビー賞」を受賞した。
個人情報
バンクシーの名前やアイデンティティは公表されておらず、飛び交っている個人情報はあくまで憶測のものである。
2003年に『ガーディアン』紙のサイモン・ハッテンストーンがて行ったインタビューによれば、バンクシーは「白人、28歳、ぎっしりしたカジュアル服、ジーンズ、Tシャツ、銀歯、銀のチェーンとイヤリング。バンクシーはストリートにおけるジミー・ネイルとマイク・スキナーを混じり合わせたようなかんじだ」と話している。
バンクシーは14歳から芸術活動をはじめ、学校を追い出され、軽犯罪で何度か刑務所に入っている。ハッテンストーンによれば「グラフィティは行為は違法のため匿名にする必要があった」と話している。
1990年代後半から約10年間、バンクシーはブリストルのイーストン地区の家に住んでいた。その後、2000年ごろにロンドンへ移ったという。
「ごく普通のワーキングクラスのやつだった。完璧にまともなやつだった。彼は目立たないことを好んだから、グラフィティアーティストであることも気にならなかった。謎めいているとされる辺りが気に入っていて、ジャーナリストやメディアから壁で隔離されることが彼は好きなんだ。」
と何度かバンクシーと仕事のある写真家のマーク・シモンズは話している。
確証のないバンクシーの正体
バンクシーの本名はロビン・ガニンガム。1973年7月28日にブリストルから19km離れたヤーテで生まれた。ガニンガムの仲間にや以前通っていたブリストル大聖堂合唱団のクラスメートがこの噂の真相について裏付けており、2016年に、バンクシー作品の出現率とガニンガムの知られた行動には相関があることが調査でわかった。
1994年にバンクシーはニュヨークのホテルに「ロビン」という名前でチェックインしている。2017年にDJゴールディはバンクシーは「ロブ」であると言及した。
過去にロビン・ガニンガム以外で推測された人物としては、マッシブ・アタックの結成メンバーであるロバート・デル・ナジャ(3D)やイギリスの漫画家ジェイミー・ヒューレットがいる。ほかにバンクシーは複数人からなる集団芸術家という噂が広まったこともある。2014年10月にはバンクシーが逮捕され、彼の正体が明らかになったというネットデマが流れた。
ブラッド・ピットはバンクシーの匿名性についてこのようにコメントしている。
「彼はこれだけ大きな事をしでかしているのにいまだ匿名のままなんだ。すごい事だと思うよ。今日、みんな有名になりたがっているが、バンクシーは匿名のままなんだ」
作品解説
略歴
若齢期
バンクシーは1990年から1994年ころにフリーハンドによるグラフィティを始めている。ブリストル・ドリブラズ・クルー(DBZ)のメンバーとして、カトーやテスらとともに知られるようになった。
バンクシーは、ニック・ウォーカー、インキー、3Dといった少し上の世代の地元ブリストルアンダーグラウンドシーンの芸術家から影響を受けている。この時代に、バンクシーはブリストルの写真家スティーブ・ラザライズに会い、のちに彼はバンクシーの作品を売るエージェントとなった。
初期はフリーハンド中心だったが2000年までに作品制作時間を短くするため、ステンシル作品へ移行しはじめた。ゴミ箱の下で警察の目から逃げているときにステンシル作品に変更しようと考えたという。
「18歳のとき、旅客列車の横に描こうとしていたら警察がきて、1時間以上ダンプカーの下で過ごした。そのときにペインティングにかける時間を半分にするか、もう完全に手をひくしかないと気がついた。それで目の前の燃料タンクの底にステンシルされた鉄板を見上げていたら、このスタイルをコピーして、文字を3フィートの高さにすればいいと気付いた」
ステンシル作品に変更してまもなく、バンクシーの名前はロンドンやブリストルで知られるようになった。
バンクシーが最初に大きく知られるようになった作品は、1997年にブリストルのストーククラフトにある弁護士事務所の前の広告に描いた作品「ザ・マイルド・マイルド・ウエスト」で、3人の機動隊と火炎瓶を手にした熊が対峙した作品である。
バンクシーのステンシル作品の特徴は、ときどき、硬い政治的なスローガンのメッセージと矛盾するようにユーモラスなイメージを描くことである。この手法は、最近、イスラエルのガザ地区で制作した「陽気な子猫」にも当てはまる。なおバンクシーの政治的メッセージの内容の大半は反戦、反資本主義、反体制で、よく使うモチーフは、ネズミ、猿、警察、兵士、子ども、老人である。
2011年7月に描かれたバンクシーの初期作品『ピンクメガネのゴリラ』は、10年以上前にイーストビルにあったソーシャルクラブの外壁に描かれた作品だが、現在はランドマークになっている。
2002−2003
2002年6月19日、バンクシーの最初のロサンゼルスの個展「Existencilism」が、フランク・ソーサが経営するシルバーレイク通りにある331⁄3 Galleryで開催された。個展「Existencilism」は、33 1/3ギャラリー、クリス・バーガス、ファンク・レイジー、プロモーションのグレース・ジェーン、B+によってキュレーションが行なわれた。
2003年にロンドンの倉庫で「ターフ・ウォー」というショーが開催され、バンクシーはサマセットの牧場から連れて来られた家畜にスプレーペイントを行った。ショーにはアンディ・ウォーホルのポートレイトに覆われた牛、ホロコースト犠牲者が来ていたようなパジャマの縞模様をステンシルされた羊などが含まれている。
王立動物虐待防止協会も審査した結果、少々風変わりではあるけれども、ショーに動物を使うことは問題ないと表明した。しかし、動物保護団体で活動家のデビー・ヤングが、ウォーホルの牛を囲っている格子に自身を鎖をつかってくくりつけて抗議した。
バンクシーのグラフィティ以外の作品では、動物へのペインティングのほかに、名画を改ざん、パロディ化する「転覆絵画(subverted paintings)」がある。代表作品としては、モネの「睡蓮」に都市のゴミくずやショッピングカートを浮かべた作品がある。
ほかには、イギリスの国旗のトランクスをはいたサッカーのフーリガンかと思われる男とカフェのひび割れたガラス窓に改良したエドワード・ホッパーの「ナイトホーク」などの作品が有名である。これらの油彩作品は、2005年にロンドンのウェストボーングローブで開催された12日間の展示で公開された。
かろうじて合法な10ポンド偽札(2004-2006年)
2004年8月、バンクシーは偽装イギリス10ポンド紙幣を作り、エリザベス女王の顔をウェールズ公妃ダイアナの顔に入れ替え、また「イングランド銀行」の文字を「イングランドのバンクシー」に書き換えた。
その年のノッティング・ヒル・カーニバルで群衆にこれらの偽装札束を誰かが投げ入れた。札束を受け取った人の中には、その後、地元の店でこの偽札を使って過ごしたものがいるという。その後、個々の偽10ポンド紙幣は約200ポンドでeBayなどネットを通じて取引された。
また、ダイアナ妃の死を記念して、POW(バンクシーの作品を販売しているギャラリー)は、10枚の未使用の偽紙幣同梱のサイン入りの限定ポスターを50枚販売した。2007年10月、ロンドンのボナムズ・オークションで限定ポスターが24,000ポンドで販売された。
2005年8月、バンクシーはパレスチナへ旅行し、イスラエル西岸の壁に9つの絵を描いた。
バンクシーは2006年9月16日の週末にロサンゼルスの産業倉庫内で「かろうじて合法」という個展を開催。「象が部屋にいるよ」という触れちゃいけない話題のことを指すイギリスのことわざを基盤にした展示で、ピンクとゴールドの花のパターンの壁紙や、ペインティングされたインド象が設置された。展覧会で配布されたリーフレットによれば、世界の貧困問題に注意を向けることを意図した展示だという。