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【美術解説】流井幸治「境界線上を漂うオブジェ」

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流井幸治 / Ryui Koji

境界線上を漂うオブジェ


概要


流井幸治(Ryui Koji)1976年京都生まれ。オーストラリア在住。

シドニーを拠点とする彫刻家、流井幸治にとって、アートとは物事にかたちや用途を超えた性格を吹き込む知覚の枠組だという。

 

そこでは、生命のないオブジェたちも、目に見える物質としての存在を超えた力を持ちます。アニミズム文化が自然のかたちに癒しを見いだし、お守りが幸運や無事を保証し、あるいはコピー機があなたのことを気にくわないかのように言うことをきかなくなる。同様に、わたしたちはアート作品にまるで意志があるかのような特徴-独創性、ひらめき、偉大な知識、洞察力、想像力-の痕跡を見つけ出すことがある。

科学的事実と人間の知覚のあいだに生じる日常的なズレ。流井はこれを茶目っ気あふれるやり方で扱い、アート作品と単なるモノのとの境界線上を漂うオブジェを創りだす。そこでは既存の製品(レディメイド)が、イメージにかたちを与え、かたちに意味を与えます。彼の作品で重要なのは、抽象と具象、中心と背景、形式と内容といった対立関係と繊細な戯れでもある。

『六本木クロッシング2013』での出品作は、シンプルな木製フレームに有名人のしわくちゃな複製写真がぶら下がるシリーズと、レジ袋に詰められた粘土の塊たちが、間違って組み立てられたIKEAの棚にさまざまな並び方で展示されるシリーズである。棚のさまざまな表面が織りなす空間に配置され、ハッピーフェイスは宇宙的なスケールから眺めた小さな世界の住人になる。

 

一方、垂直にぶら下がる有名人たちの写真でも、もともとの理想化されたイメージが判然としないものにされ、そのグロテスクな様相は視覚的な興味を掻き立てられる。この流れのなかでは、3つ目の作品、ハンガーの彫刻にも擬人的な性格が感じられます。これらのオブジェは、私たちがそこに投影する情緒的印象を反映しているだけなのだろうか。あるいはオブジェ自体がそうした印象を生み出しているのだろうか。いたずらっぽく、挑発的に、流井は疑問をそのままに私たちに向けて提示している。

 

<関連リンク>

Sarah Cottier Gallery

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