クリストファー・コロンブスによるアメリカの発見
The Discovery of America by Christopher Columbus
ダリによるコロンブスへのオマージュ
概要
「新大陸の発見」が主題
「クリストファー・コロンブスのアメリカ発見」は、1958年から1959年にかけてサルバドール・ダリによって制作された油彩作品。410×284cmもある最も巨大なダリ作品の1つです。アメリカ、フロリダにあるダリ美術館が所蔵しています。
アメリカの実業家でコレクターのハンチントン・ハートフォードの依頼により、ニューヨークの2 Columbus Circle内にあるハンチントンの近代美術館のオープニングのために制作されたものです。この作品は、同じスペイン人であるコロンブスへのオマージュであり、スペインの歴史、宗教、芸術を連結させて全体的には神話仕立てになっています。
ただし、当時のカタランの歴史家たちは、コロンブスはカタルーニャ出身ではなく、イタリア出身であることを理由にこの作品を批判しています。しかし、ダリは歴史的事実の正確さよりも、“新大陸の発見”という出来事そのものを比喩的に表現したかったので、気にしませんでした。
コロンブスとダリの姿を重ねている
絵の中のコロンブスは、アメリカ大陸発見時、本当は中年の船員だったにもかかわらず、新大陸アメリカの発見を象徴する聖母マリア化したガラの旗印を持ち、旧大陸を象徴するの古典的なローブに身を包んだ青年として描かれています。
のちにダリ自身が、ガラのことを「新大陸の発見」と説明しているように、ダリの青年期の姿をコロンブスにたとえています。
またダリはこの時代、ローマ・カトリック教会の神秘主義へ関心を高めていた時期です。そのため、新大陸にキリスト教と真の教会をもたらすコロンブスの姿を自分と重ねています。なおダリ自身は、絵の中においてコロンブスの後方にいる十字架をもってひざまづく僧侶の姿として描かれています。
ベラスケス作品から強い影響
300年前のスペインの巨匠であるベラスケス作品からかなり多くを引用している点も大きな特徴です。ベラスケスはダリに大きな影響を与えており、ダリの特徴である口ひげもベラスケスからの影響です。
特に「ブレダの開城」からの引用は明白で、「ブレダの開城」右側に描かれている櫓とよく似たものが、本作の右側にも描かれている。