ピレネーの城 / The Castle of the Pyrenees
浮遊する山と頂上にある城の正体は?
概要
浮遊する山
「ピレネーの城」は、1959年にルネ・マグリットによって制作された油彩作品。イスラエル美術館所蔵。頂上に城がある巨大な山が海上を浮遊しています。
画面の半分以上が浮遊する山で占めており、自然と視点は山の方へ向かいます。その際、画面の中心、つまり山の中心ではなく、城が設置されている画面上部へ中心から上方へ見上げるように視線移動するよう画面が構成されている。この視線移動によって山が浮遊しているということが分かる。
なお、画面下部は波打ちぎわが分かるものの、陸が見えないよう描かれています。絵全体で陸が分かるものは浮遊する山のみである。線上にはうっすらと大気のようなものが描かれており「大家族」の背景の海とよく似ています。
山へは空想によって入ることができる
マグリットは作品についてこのようなコメントをしている。
「巨大な岩の浮遊は、普通に考えると重力に逆らうありえない事象である。ここで考えることがあります。山は空中にあり土台はない。本来は山は地球の一部であるが、この絵では山は地球と分離されている。どのようにして頂上の城に入ることができるのだろうか? 山へ入る入口もない。海からも陸からも登ることができない。空や想像力によってのみ入ることができる。」
ピレネーの城とは
ピレネーは南西ヨーロッパにある山脈の名前でフランスとスペインを隔てる自然の境界線です。
その語源はギリシャ神話によれば、ピュレネはナルボンヌ地方の王べブリクスの娘の名前。王の宮廷でヘラクレスに犯されたピュレネは、次の日、みごもり蛇を産みあした。驚いてピュレネは山へ逃れるが野獣に殺されてしまいます。ヘラクレスは彼女の死骸を発見して、埋葬し、山にピレネーという名前を付けたといいます。
おそらくピレネーの城は、ピレネーの墓、もしくは彼女が隠れた山のことかもしれません。