人の子 / The Son of Man
緑のリンゴで隠された男
概要
セルフ・ポートレイト
「人の子」は、1964年にルネ・マグリットによって制作された油彩作品です。マグリットはこの作品をセルフ・ポートレイトとして位置づけています。
海と曇り空を背景にして、低い壁の前にオーバーコートと山高帽を身につけた男が立っている絵です。男の顔の大部分は緑のリンゴで隠されています。しかしながら、男の目は緑のリンゴの端からチラッとのぞくように目が出ています。この絵のなかでもうひとつ不思議な箇所は左腕の関節が後ろに曲がっているように見えるところです。
マグリットはこの絵についてこのようなコメントを残しています。
「少なくとも、それが顔であることは分かっているものの、リンゴが顔全体を覆っているため、部分的にしかわかりません。私達が見ているものは、一方で他の事を隠してしまいます。私たちはいつも私達が見ることで隠れてしまうものを見たいと思っている。人は隠されたものや私たちが見る事ができない事象に関心を持ちます。この隠されたものへの関心はかなり激しい感情の形態として、見えるものと見えないもの間の葛藤となって立ち合われるかもしれない。」
類似作品
「人の子」とよく似たマグリットのほかの作品に「世界大戦」があります。両方とも共通して海が見える壁の前に立っていますが、「世界大戦」のほうは女性で、手に傘を持ち、顔はすみれで隠されています。
ほかに似た作品では「山高帽の男」があり、こちらは人の子と同じ山高帽の男性ですが、顔はリンゴではなく鳥で隠されています。
ポップカルチャーと「人の子」
・アレハンドロ・ホドロフスキーの「ホーリー・マウンテン」で、富豪の1人の家の中に「人の子」が飾られています。
・アニメ「魔法少女まどか☆マギカ」の第一話で「人の子」から影響を受けた演出が見られます。
・映画「トーマス・クラウン・アフェアー」でルネ・マグリットの絵が現れ、また全体的にマグリットの影響が濃く見られます。
・ノーマン・ロックウェルの作品「ミスター・アップル」というマグリットから引用した作品があります。