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【作品解説】アルブレヒト・デューラー「自画像」

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自画像 / Self-Portrait

正面自画像の先駆的作品


《自画像》,1500年
《自画像》,1500年

作者 アルブレヒト・デューラー
制作年 1500年
メディウム パネルに油彩
サイズ 67.1 cm × 48.9 cm 
所蔵者 アルテ・ピナコテーク

《自画像》は1500年にドイツのルネサンス期の画家アルブレヒト・デューラーによって制作された油彩パネル画。1500年初頭、彼の29歳の誕生日直前に描かれたこの作品は、彼が描いた3点の自画像の最後のものである。《28歳の自画像》とも呼ばれる

 

美術史家は、デューラーの自画像の中でも最も個人的であり、象徴的であり、複雑なものとみなしている。この自画像は、それまでの自画像とは異なり、鑑賞者と直接的な向き合い、そして明らかに対峙した構図となっている。1500年頃、正面からのポーズの世俗的肖像画は異例のものだった。

 

また、それ以前に多く制作されたキリストの肖像と似ているという点でも、最も注目すべきものである。

 

美術史家は、その対称性、暗い色調、画家が直接鑑賞者と向き合い、祝福するかのように両手を胸の中央に挙げている様子など、宗教画の慣習との類似性を指摘している。

解説


デューラーの表情は仮面のような柔軟性と威厳が見られるが、苦悩と情熱の落ち着かない様子も伺える。

 

この自画像は、それまでの自画像とは異なり、鑑賞者と直接的な向き合い、そして明らかに対峙した構図となっている。半身像で、正面から見て、ほぼ左右対称的な形状をしている。ありきたりな背景の欠如は、時や場所と無関係であるデューラー自身を表現しているように思わせる。

 

1500年頃、正面からのポーズの世俗的肖像画は異例のものだった。イタリアでは、従来の横顔の肖像画の流行が終わりつつあり、1420年頃から北欧で流行りはじめていた斜め顔の肖像画に取って代わられていた。デューラーの初期肖像画も斜め顔だった。

 

ハンス・ホルバインはイングランドのヘンリー8世と彼の女王を何人か描いているが、おそらくデューラーのような正面画で描く指示をされていたのだろう。

 

 

また、黒一色の背景に茶色の色調で服装が描かれていることで、陰鬱な雰囲気を醸し出している。以前の2点の自画像に見られたタッチとトーンの軽さはなくなり、内向的で複雑な表現に変化している。

 

この作品におけるデューラーのスタイルは、のちに美術史家マルセル・ブリオンによれば「アングルのような古典主義」への発展につながったという。

 

構図の幾何学的分析は、いくつかのハイライトが絵画の中央に垂直軸に非常に近い位置に配置されて、緻密な対称性を描いているように見える。しかし、この作品は完全に左右対称ではなく、頭は中央よりやや右にあり、髪の毛は中央にはなく、左右で髪の毛の落ち方が異なり、目はやや左に向いている。

 

この自画像は、1493年のストラスブールの自画像と1498年のイタリア訪問後に制作された自画像の両方よりも、明らかに成熟した男性像である。どの自画像でも共通して、デューラーは当時の流行の髪型や服装を強調しており、若々しい美貌を演じている。

 

デューラーの両脇にある暗い碑文は、まるで宙に浮かんでいるかのようで、この肖像画が非常に象徴的な意味を持っていることを強調している。

 

この作品が描かれた1500年頃、デューラーは28歳だった。中世ヨーロッパにおいて28歳は人生の段階において若者から成熟への移行点とみなされていた。したがって、この肖像画はデューラーの人生の転機と1000年祭の両方を記念したものである

 

左上の背景の中央に描かれている1500年は、ここでは画期的なものとして祝されている。さらに、彼のサインのイニシャルである「A.D.(Albrecht Dürer)」の上に「1500年」を配置することで、「Anno Domini(西暦紀元)」の略語の意味が含まれている

その他のデューラーの自画像作品


《十三歳の自画像》,1484年
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《自画像》,1493年
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《自画像》,1498年
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