アッティカ合衆国 / United States of Attica
アメリカで発生した悲劇を記録したプロテスト・アート
作者 |
フェイス・リングゴールド
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制作年 | 1971-1972年 |
ムーブメント | プロテスト・アート、人種差別 |
『アッティカ合衆国』はニューヨークの芸術家で活動家のフェイス・リングゴールドが、1971年から1972年にかけて制作したプロテスト・アート。
アメリカ全土が4分割され、黒人民族主義者のマーカス・ガーベイが掲げる汎アフリカ国旗で使われた緑、赤、黒の3色で構成されている。また、ライフルスコープを照準と十字架を重ねている。
この地図には、1880年代のオレゴン州での反中国暴動、約4000人のチェロキー族インディアンを虐殺したオクラホマ州のトレイル・オブ・ティアーズ、ミシシッピ州のエメット・ティルのリンチ事件、1968年のテネシー州でのマーティン・ルーサー・キング・ジュニア暗殺事件、カリフォルニア州、ミシガン州、テキサス州での暴動など、アメリカ全土で起きたリンチ、レイプ、戦争、先住民の虐殺、その他のさまざまな暴力事件の日付とその詳細が記入されている。
リングゴールドは、この作品を多くの人に配布するためリトグラフ形式で制作している。作品の下部には「このアメリカの暴力の地図は不完全である。欠けているものを見つけたら書き加えてください」と記載されている。
背景
この作品は、1971年9月13日ニューヨーク州バッファローの東にある悪名高いアッティカ矯正施設で40人近くの囚人と施設関係者がなくなった悲劇に反応して制作されたものである。
当時のアッティカの受刑者の大部分は黒人またはラテン系であり、その刑務官は圧倒的に白人だった。2200人の受刑者の内の半数以上の1200人以上が、人種差別主義者の矯正担当官に対して抗議の声を上げ、刑務所を占拠する事件が発生した。
囚人たちは、看守や民間人を含む約40人を人質を取り、数日間にわたって平和的交渉のともと生活環境の改善を申し出た。しかし、ネルソン・ロックフェラー知事の命令で、州警察は刑務所を急襲、奪還する。その結果、囚人と人質の両方で39人の死者が出た。
死者を出した原因の多くは当局だったにもかかわらず、責任を負う役人は一人も正式に起訴されることはなかった。
『アッティカ合衆国』は、人種差別と不平等に根ざしたアメリカのオルタナティブな歴史を視覚化したものであるが、一方で抑圧された人々が自由のために戦う勇敢さを記録、視覚化したものである。
■参考文献
・https://www.nytimes.com/2020/10/15/t-magazine/most-influential-protest-art.html、2020年11月17日アクセス