16世紀にレオナルド・ダ・ヴィンチがポプラ材のパネルに油絵で描いた《モナ・リザ》(La Joconde)は、これまでさまざまな憶測を呼んできた。
画面両端にあった円柱は切り抜かれたのか?
レオナルドの死後、長い間、この絵は本来あった両側の部分が切り抜かれていると主張されてきた。同時代の《モナ・リザ》の模倣画の大半は、絵の両脇に柱が描かれているためであるの理由である。《モナ・リザ》では台座の端だけがうっすら描かれている。
しかし、マーティン・ケンプをはじめ一部の美術史家は、この絵は切り抜かれておらず、模倣画に描かれている柱は、模倣画家が独自に付け加えたものだと主張している。
2004年から2005年にかけて、39人の専門家からなる国際調査班がモナ・リザの徹底的な科学的検証を行ったことで、ケンプの主張はより強固なものとなった。額縁(現在のものは2004年にモナリザに取り付けられたもの)の下には、パネルの四辺を囲むように「リザーブ」があることが発見されたからである。
リザーブとは、パネルのジェッソで塗装された部分を囲むむきだしの木の部分である。
これはジェッソや絵の具が剥がれたのではなく、本物のリザーブであることは、ジェッソ領域の端でブラシストロークが積み重なった結果、ジェッソ周囲が盛り上がっていることからわかる。
もともと20mmほどあったと思われるリザーブは、おそらく額に合わせるために切り抜かれたようだが、絵自体は一切切り抜かれていない。
したがって、初期の模倣作品に描かれている柱は、その画家たちが描いたものか、あるいは別バージョンのモナリザの複製に違いない。
つまり、《モナ・リザ》はルーブル美術館が所蔵している作品だけでなく、同時代の作家が模倣した別の《モナ・リザ》が存在する可能性がある。
背景
トスカーナ州の渓谷、ヴァル・ディ・キアナにあるアレッツォの人々は、伝統的にモナリザの背景について自分たちの土地の風景だと主張してきた。
『Cartographica』誌に掲載された論文によると、この風景は2つの部分で構成されており、それらを合わせるとレオナルドが描いた鳥瞰図であるヴァル・ディ・キアナに相当するという。
アイルワースのモナ・リザ
《モナ・リザ》は、複数のバージョンが存在したとも言われている。その1枚の可能性があるのは、2012年9月27日に一般公開されるまで40年間スイスの銀行の金庫に隠されていた《アイルワースのモナ・リザ》である。
スイス連邦工科大学チューリッヒ校は、この作品をレオナルドの生前と推定しており、また神聖幾何学の専門家は、この作品がレオナルドの基本的な線構造に適合していると述べている。
ヴァーノン・コレクションのモナ・リザ
ヴァーノン・コレクションも同じ主張をしている。ヴァーノンのモナリザは、もともとルーブル美術館に収蔵されていたものであるため、特に興味深い。
1616年頃に作られた別の模倣作は、1790年頃、リーズ公爵がレイノルズの自画像と引き換えにジョシュア・レイノルズに贈ったものである。レイノルズはこれを本物とし、ルーブル美術館にあるものを模写と考えたが、現在ではその反証がなされている。
しかし、《モナ・リザ》の色味が現在よりもはるかに鮮明だったときに模写された作品のため、色味において本物が描かれた時代と近い点で、本作は有用である。個人蔵だが、2006年にダルウィッチ・ピクチャー・ギャラリーで展示された。
弟子との共同制作版《モナ・リザ》
2012年1月、マドリードのプラド美術館は、レオナルドの弟子がレオナルドと共同制作した思われる複製を発見し、ほぼ完全に復元したことを発表した。
《モナ・リザ》はニスが経年によりひび割れて黄ばんでいるため、複製は当時の肖像画の様子をよりよく示しています。
ドイツの画像研究者であるバンベルク大学のクラウス=クリスティアン・カーボン氏とマインツ大学のベラ・ヘスリンガー氏は、プラド美術館版と《モナ・リザ》を比較しながらさらなる解析を行い、2014年5月には、主要特徴である遠近法解析から、2つの作品は同時期にわずかに異なる視点から描かれたと推測している。
裸体版モナ・リザ
《モナ・リザ》には、裸体で描かれたいくつかの複製がある。これらは、リザの裸体を描いたレオナルドの失われた原画を模写したものであるとの憶測もある。