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【作品解説】バンクシー「愛はごみ箱の中に」

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愛はごみ箱の中に / Love Is in the Bin

オークション中にズタズタにされた介入作品


※1《愛はごみ箱の中に》
※1《愛はごみ箱の中に》

概要


作者 バンクシー
制作年 2018年、2006年(オリジナル)
メディア キャンバスにエアロゾル・スプレー、アクリル、ボード、アーティストよる額
サイズ 101 cm (40 in) × 78 cm (31 in) × 18 cm (7.1 in)

『愛はごみ箱の中に』は2018年10月にサザビーズ・ロンドンのオークション中で、バンクシーの作品『風船と少女』が売り出された際に、突如として自己破壊された出来事に対して付けられた作品です。

 

この作品は、売り手と買い手の双方が驚きと混乱の中で起きました。バンクシーが事前に用意していた仕掛けによって、絵画がオークションの場で自己破壊された絵のです。オークションに出品された直後、作品の下部分に仕込まれたシュレッダーによって、絵画は断片化され、現場は混乱に陥りました。

 

この作品は、バンクシーの伝統的な芸術的手法や社会的批評に加えて、彼の新しいアートフォームとして注目を集めました。

 

バンクシーによって介入された芸術作品であり、介入芸術の代表作の1つです。サザビーズは「美術史においてライブ・オークション中に作られた初の作品だ」と話しています。

 

作品のタイトル「愛はゴミばこの中に」は、バンクシーがこの出来事を通じて、美術市場や社会的な価値観についての彼自身の見解を示しているようです。

 

この作品は、芸術市場があくまで利益を追求するビジネスであることを象徴的に示すものとして注目を集めました。

 

芸術家たちは自らの作品を生み出し、それに魂を込めている一方で、その作品が売買される際には、それが単なる商品として扱われてしまうことがあります。このことについてバンクシーは、独自の方法で反発を表明したと言えます。

 

バンクシーは、自らの作品が巨額の金額で取引されることに対して、これまでも風刺的なスタンスを取り続けてきましたが、この作品は彼のそれまでの作品よりもより強いメッセージを伝えています。

 

また、この作品は、芸術家が自らの作品に関して完全な支配権を持つことができないという問題にも触れています。

 

この作品を購入した買い手は、絵画の所有権を手に入れたものの、絵画をどのように扱うかについては、芸術家であるバンクシーの意図と異なる選択をすることができました。このことは、芸術家と所有者の間の関係についての複雑な問題を浮き彫りにしました。

 

「愛はゴミばこの中に」は、芸術と商業、そして社会との関係について、考えさせる作品となりました。この作品によって、芸術に対する私たちの考え方が変わることが期待されます。

重要ポイント


  • 「愛はごみ箱の中に」は、2018年にバンクシーの作品『風船と少女』が自己破壊された出来事に対して付けられた作品である。
  • この作品は、芸術市場が利益を追求するビジネスであることを象徴的に示し、芸術家と所有者の間の複雑な問題を浮き彫りにした。
  • 「愛はゴミばこの中に」は、芸術と商業、そして社会との関係について考えさせる作品として注目を集め、芸術に対する私たちの考え方に影響を与える可能性がある。

オリジナル作品


「愛はごみ箱の中に」は、バンクシーの代表的な壁画作品「風船と少女」の派生作品として制作されました。プリント作品よりも極めて希少な独立した作品の1つとみなされています。

 

この作品が制作された経緯は、2006年に開催されたバンクシーの個展「かろうじて合法」でのことに遡ります。展覧会後、この作品はバンクシーの友人にプレゼントされました。

 

しかし、バンクシーはこの作品がいつかオークションに出品される可能性があることを予想しており、友人に手渡す前に、作品内に自動シュレッダーの装置を仕込んでいたとされています。

 

素材としては、キャンバスやボードにエアゾール・スプレーとアクリル絵具が使用されています。この作品がキャンバス作品であることから、バンクシーが自らの芸術的技術や技能をキャンバス作品にも応用していることが伺えます。

オークションと自動シュレッダー


2018年10月5日に開催されたサザビーズ・ロンドンで、この作品が競売にかけられ104万2000ポンドで落札された。この価格はオークションにおけるバンクシー作品では過去最高額となった。

 

しかし、落札終了を告げる木槌を鳴らした2秒後、作品が勝手に額の底から滑りおちはじめ、アラーム音とともに自動的に裁断され、その場にいたオークション参加者や関係者は叫び声をあげた。作品は電気仕掛けのシュレッダー装置をしかけるため、額の深い場所におさめられていた。サザビーズは機械が動作すると予見できなかったと話している。

 

作品が切り裂かれたあと、落札者との間で購入するかどうか話し合いがおこなわれ、10月11日に落札価格値で購入することで両者は合意にいたった。しかし、作品名は『風船と少女』から『愛はごみ箱の中に』に変更された。

 

落札者はサザビーズと長い付き合いのあるヨーロッパのコレクターである。美術市場関係者らは作品の自己破壊が、今後かえって作品の価値を高めると予測した。サザビーズは「美術史においてライブ・オークション中に作られた初の作品だ」と話している。

 

バンクシーはオークション時の裁断の様子を撮影し、Instagramにアップロードしてレポートしつつ、額内におさめられた裁断機器の構造を説明したが、投稿記事は削除された。その後、この絵が完全に裁断されるよう意図していたこを示す別のビデオを公開した。

推測と理論


現場を撮影した男はバンクシー、もしくはバンクシーの関係者であると推定されている。オークション終了後、蹄鉄工で芸術家のジョン・ギルバートは、作品が自動的に裁断されるという理論に多くの疑問点を示した。

 

『Bored Panda』でのインタビューで彼は、バンクシーが短い動画で裁断方法を解説しているが、この動画ではX-Acto製の刃物のようなものが横向きにキャンバスに取り付けられており、この状態では絵を裁断することは不可能であるという。

 

さらに、刃物の位置や間隔では、あのような裁断方法にはならないと話している。ギルバードは額内で自動裁断処理はしていないと判断しており、単にもともと裁断された絵画が仕組まれ引き出されただけで、オリジナルの絵画はどこかに保存されているとみなし、「伝統的なマジシャンのトリックである」と結論づけている。

作品の展示


同作品は2019年2月5日から3月3日までドイツ南部のバーデン=バーデンにあるフリーダー・ブルダ美術館で展示されることになった。美術館によると同作品の下半分を細断したシュレッダーは「動作しない状態」にあると明かした。

※2:ドイツ南西部バーデンバーデンにあるフリーダー・ブルダ美術館で、細断された英国の覆面ストリートアーティスト、バンクシーの作品「愛はごみ箱の中に」を持ち上げる美術館の職員たち(2019年2月4日撮影)。
※2:ドイツ南西部バーデンバーデンにあるフリーダー・ブルダ美術館で、細断された英国の覆面ストリートアーティスト、バンクシーの作品「愛はごみ箱の中に」を持ち上げる美術館の職員たち(2019年2月4日撮影)。


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