真珠の耳飾りの少女 / Girl with a Pearl Earring
オランダで最も美しいフェルメールの絵画
概要
作者 | ヨハネス・フェルメール |
制作年 | 1665年 |
サイズ | 44.5 cm × 39 cm |
メディウム | キャンバスに油彩 |
所蔵者 | マウリッツハイス美術館 |
『真珠の耳飾りの少女』は、オランダ絵画の黄金時代を代表する画家ヨハネス・フェルメールが1665年頃に描いた絵画です。作品はキャンバスに油彩で描かれ、高さ44.5cm、幅39cmの大きさがあります。作品には「IVMeer」のサインがあるものの、正確な年代は不明です。
この絵画は、少女が真珠の耳飾りをしている姿を描いたものであり、濃い背景と少女の内面的な表情が特徴的です。この作品には、フェルメールが得意とした光と影、そして非常に細かい筆致が見て取れます。
少女は左耳に大きな真珠の耳飾りをしています。背景は暗く、少女の顔が浮き上がるように描かれています。少女の表情は穏やかで、観る者に対して微笑んでいるかのような印象を与えます。真珠の輝きと少女の表情が調和した、美しく緻密な作品となっています。
『真珠の耳飾りの少女』は、フェルメールが残した数少ない絵画の一つであり、また、世界中の芸術愛好家にとって非常に有名な作品の一つでもあります。
この絵は、17世紀にオランダで描かれたトロニー画で、肖像画ではなく「顔」を描いたものです。これは、オランダの黄金時代の絵画やフランドル地方のバロック絵画によく見られる特徴的なジャンルの一つです。
何世紀にもわたって様々な名前で呼ばれてきましたが、20世紀末になって、描かれている少女が身につけていた真珠の耳飾りにちなんで、現在のタイトルで知られるようになりました。
1902年以降、オランダのハーグにあるマウリッツハイス美術館に所蔵されています。さまざまな文学的な論議の対象とされてきました。
この作品は、数多くの文学的な論議の対象となっており、2006年にはオランダで最も美しい絵画に選ばれるなど、多くの人々を魅了しています。
重要ポイント
- フェルメールが得意とした光と影が表現されている。
- 肖像画ではなく「顔(頭)」を描いたトロニー画。
- 作品名は、20世紀末になって少女が身につけていた真珠の耳飾りに因んでつけられた。
基本的な情報
この絵は17世紀にオランダで描かれたトロニーで(オランダの黄金時代の絵画やフランドル地方のバロック絵画によく見られる作品)肖像画ではなく「顔」を描いたもので、エキゾチックなドレス、東洋のターバン、そして大きな真珠のイヤリングを身に着けたヨーロッパの少女を描いています。
2014年には、オランダの天体物理学者ヴィンセント・アイクがイヤリングの素材に疑問を提起しています。鏡面反射、洋ナシの形、イヤリングの大きさを根拠に、真珠というよりも磨かれたズズのように見えると主張しています。
1994年の最新の修復において、微妙な配色と、少女の親密なまなざしが大幅に改善されています。修復の過程で、暗い背景が元々は深いエナメルのような緑色であったことが判明しました。
この色彩効果は、現在見られる黒い背景の上に、薄く透明な絵の具(釉薬)を重ねることで得られたものだとされています。しかし、緑の釉薬の有機顔料である藍と溶着の2つの顔料は色あせてしまっています。
所有者の変遷
フェルメールの稀少な作品が海外に流出してしまうのを長年阻止しようとしていたヴィクトル・デ・スチュアースの助言により、アーノルドゥス・アンドリース・デ・トムベは、1881年にハーグのオークションでこの作品をわずか2ギルダー+30セントで(現在の購買力で約24ユーロ)で落札しました。
当時、この作品の損傷が激しく、デ・トンベには相続人がいませんでした。デ・トムベには相続人がいなかったため、1902年にマウリッツハイス美術館に寄贈されました。
この作品は1965年と1966年には、ワシントンD.Cのナショナル・ギャラリーで開催されたフェルメール展で展示されました。
2012年には、マウリッツハウス美術館の改修・拡張工事における巡回展の一環として、日本の東京国立西洋美術館で、2013年から2014年にかけてアメリカのアトランタのハイミュージアム、サンフランシスコのデ・ヤング美術館、ニューヨークのフリック・コレクションで展示されました。
その後、2014年にイタリアのボローニャで展示され、同年6月にマウリッツハイス美術館に戻されました。
技術
この絵は、オランダ文化遺産研究所とFOM原子分子物理学研究所 (AMOLF) アムステルダムの科学者によって調査されました。
地は緻密で黄色がかった色をしており、チョーク、鉛白、黄土、ごくわずかな黒で構成されてます。暗い背景には、ボーンブラック、ウエルド(ルテオリン、レセダ・ルテオラ)、チョーク、少量の赤黄土色、藍色が含まれています。顔とドレープには、おもに黄土色、天然のウルトラマリン、骨黒、木炭黒、鉛白が使われてます。
2018年2月から3月にかけて、国際的な美術専門家チームが2週間にわたり、美術館内に特設されたガラス工房で、一般公開しながら絵画の研究を行いました。
研究ではフェルメールが使用した手法や材料について詳しく知るために、作品を額縁から取り出し、顕微鏡、X線装置、特殊なスキャナーで解析されました。
このプロジェクトは「スポットライトの中の少女」と名付けられ、マウリッツハイス美術館の保存修復士であるアビー・ヴァンディヴェール氏が主宰し、その成果がマウリッツハイス美術館によって発表されました。ヴァンディヴェールのブログには、プロジェクトの詳細がたくさん掲載されています。
その結果、繊細なまつげの有無、頭の後ろにある緑のカーテン、変更点、使用した顔料と産地などの詳細などが判明しました。
眉毛がなく、背景に特徴がないことから、フェルメールは理想化された顔や抽象的な顔を描いているのではないかと推測されていましたが、その後の発見により、実際の空間であり、実在した人物を描いていることがわかりました。
ただし、真珠は輪郭がなく、また、少女の耳からそれをひっかけるフックがないため幻想だと説明しています。
絵画のタイトル
この絵は何世紀にもわたって、様々な国で様々なタイトルが付けられてきましたもともとは、フェルメールの死後の目録に記録されている2つのトロニー作品のうち、1つが「トルコ風に描かれた」(Twee tronijnen geschildert op sijn Turx)作品のうちの1つであったと考えられています。
1696年にアムステルダムで行われた絵画販売に出品された可能性があり、当時のカタログには『アンティークの衣装を着た肖像画、並外れて芸術的』(Een Tronie in Antique Klederen, ongemeen konstig)と記載されています。
1902年マウリッツハイス美術館に遺贈された後、この絵は『ターバンを着けた少女』として知られるようになりました。ただし、このタイトルの由来は1675年の目録に記録されていた、ターバンがヨーロッパのトルコ人との戦争の間、魅力的なファッションアクセサリーになっていたことから来ています。
しかし、1995年までには現在の『真珠を付けた少女』というタイトルの方が適切だと考えられるようになりました。
実際、フェルメールの絵画のうち21点に真珠は描かれていますが、その中でも《真珠の首飾りを付けた女性》では、真珠が非常に目立っています。
ほかに、《手紙を書く女性》、《若い女性の習作》、《赤い帽子をかぶった少女》、《笛を吹く少女》にもイヤリングが描かれています。
一般的にこの絵の英語のタイトルは単に「Head of a Young Girl(少女の頭)」と呼ばれていましたが、「The Pearl(真珠)」と呼ばれることもありました。ある評論家は、この名前はイヤリングのディテールからだけでなく、暗い背景の中で人物が内面的な輝きを放っていることから付けられたと説明しています。
文化的影響
この絵画を初めて文学的に扱ったのは、詩でした。ヤン・ラブロックの「フェルメールの少女の頭」という詩は、キャンバス上で解釈された想像上の美と、生活体験との間の相互作用を探求しました。
W. S.ディ・ピエロは、『ヨハネス・フェルメールの真珠の耳飾りの少女』がサンフランシスコのヘイト・ストリートという現代の舞台でどのように見えるかを再考を促し、マリリン・チャンドラー・マッケンタイアは、耳飾りの少女について「自己主張の強い性格」とコメントしています。
バンクシーは、2014年に『鼓膜に穴を開けた少女』というタイトルで耳飾りの少女を引用したストリート・アートを、ブリストルのハーバーサイドにある建物に描きました。この作品は少女の耳飾りを屋外のセキュリティ・アラームに置き換えています。
2022年10月、『Just Stop Oil』運動を代表する気候変動抗議者が、絵画を保護するガラスにji自分の頭を接着しようとし、またほかのメンバーがトマトスープをかけました。この抗議活動で絵画は破損しませんでしたが、3人が商品に対する公然暴力で逮捕されました。
BREEK - Meisje met de parel van Johannes Vermeer besmeurd in #Mauritshuis. pic.twitter.com/XzAZTOoBv9
— Steven Bakker (@Kolpen) October 27, 2022
■参考文献
・https://en.wikipedia.org/wiki/Girl_with_a_Pearl_Earring、2020年5月25日アクセス