花輪和一インタビュー3
ほかのマンガ家
(出典元:ガロ1992年 5月号)
編集部:花輪さんも丸尾さんも、描きあがった原稿を見ると、隅から隅まで描き込んであって、ものすごい時間がかかりますよね。
丸尾:あれは要するに空間恐怖症なんですよ。画面に白いところがあれば効果的だって分かっているんだけれど、白い部分があると不安になってくる(笑)。とにかく絵が四角く閉じ込められていないと安心しないんだよね。 花輪:あ、そうそう、ガロに描いているころ、枠の中に吹き出しがあるでしょ。あれが何か邪魔でさ。全部絵を描きたいと思っていた。
丸尾:なんかそれをさ、職人根性とかサービス精神とか解釈するんだけれど、そうじゃないんだよね。ただの空間恐怖症。楳図かずおとかギーガーなんかもそうじゃないかな。
編集部:じゃあ、白っぽいところが多い人のマンガなんか見るとダメ?
丸尾:いや、自分には描けないからいいな、と思いますよ(笑)。
編集部:他人のマンガなんかは、どういうふうに見ていますか。
花輪:ぱんこちゃんは面白いですね。少女の感性で描いていて。
丸尾:僕は山田花子さんが好きだね。女の人のマンガでは一番好きなんだよね。
花輪:あと、根本敬さんの村田藤吉さん好きですね。それに根本さんのマンガに出てくる小さいメガネをかけたオヤジ。全然怖いものなしでしょ。憧れますね。ああいう感じ(笑)
編集部:花輪さんは、確か吉田戦車さんも好きだったんですよね。「伝染るんです」なんか。
花輪:そうそう。あれ。モロに俺の事描いているような気がするよね。包帯少年って出てくるでしょ。あれなんか感情移入できる(笑)
丸尾:斎藤さんは?カブト虫の。すぐ泣いてブーンって飛んで行くやつ。
花輪:ああ、あれは凄く理解できるよ。のどちんこの見える泣き方が凄く気持ちいいというかさ、思い切り泣いてくれて嬉しいよね(笑)。あのマンガはスーパーで立ち読みして、いつも笑っていたよ。全部理解できちゃうんだもの(笑)。