マーク・ライデン / Mark Ryden
ポップシュルレアリスムの父
概要
生年月日 | 1963年1月20日 |
国籍 | アメリカ |
表現媒体 | 絵画、彫刻、ドローイング、インスタレーション、イラストレーション、映像 |
ムーブメント | ポップシュルレアリスム、ロウブロウアート |
関連人物 | マリオン・ペック(妻)、ロバート・ウィリアムス |
公式サイト | http://www.markryden.com/ |
マーク・ライデン(1963年1月20日生まれ)ロサンゼルス在住。2000年代のポップシュルレアリスム・ムーブメントを担ったアメリカの画家。「the god-father of pop surrealism(ポップシュルレアリスム・ゴッドファーザー)」の称号を授かる。
アングル、ダヴィッドなどのフランス古典絵画や「Little Golden Books」といった絵本にいたるまで数多くのメディアから少しずつアマルガム(合成物)を結晶するかのように絵画を構成している。日本でいえば丸尾末広の作風と近いものがある。
ほかに不思議現象、アンティーク玩具、解剖標本、動物のぬいぐるみ、骸骨、宗教的シンボルなどからもインスピレーションを受けている。彼の作品のコレクターとしては、スティーブン・キング、レオナルド・ディカプリオ、 リンゴ・スター、パトリック・レオナルド、ダニー・エルフマンなど多くの著名人が名を連ねている。
ライデンには、ルーシーとジャスパーの2人の子どもがいる。2009年にライデンは同じポップシュルレアリストのマリオン・ペックと太平洋岸北西部の森の中で結婚式を挙げた。現在はカリフォルニアのイーグルロックに住んでおり、そこで妻とアトリエを共有している。
Artnetは、マーク・ライデンとマリオン・ペックの2人をあわせて「ポップシュルレアリスムのキングとクイーン」という称号を贈り、ロサンゼルスの10組の重要なアート・カップルの1人に挙げた。
略歴
幼少期
マーク・ライデンは、1963年1月20日にオレゴン州のメドフォードで、父キース・ライデンと母バーバラの間に生まれた。
ライデンには二人の姉妹と二人の兄弟がおり、10歳上の兄キース・ライデンは「KRK」という名前でライデンと同じく画業をしている。家族は南カリフォルニアで育った。ライデンは兄のキース・ライデンに影響を受けて画業を志すようになったという。
活動初期
ライデンは、1987年にバサデナにあるアートセンター・カレッジ・オブ・デザインで美術学士(BFA)を授与して卒業。その後。1988年から1998年までのあいだは商業イラストレーターとして生活をしていた。
この時代に、マイケル・ジャクソンの『Dangerous』、レッド・ホット・チリ・ペッパーズの『One Hot Minute』、エアロ・スミスの『Love in an Elevator』などたくさんの大物ミュージシャンのアルバムジャケットを担当。ほかにスティーブン・キングの小説『Desperation』や『The Regulator』のブックカバーも手がけている。
「The Meat Show」でアーティストデビュー
商業絵画からポップ・シュルレアリスムの絵描きに転向したのは1994年。
アンダーグラウンドコミック誌の『Zap Comx』の元メンバーで、ロウブロウ・アート雑誌『Juxtapoz』編集長ことロバート・ウィリアムスのプッシュで『Juxtapoz』の表紙に使われたのがきっかけとなる。
1998年にカリフォルニアのパサデナで初個展『The Meat Show』を開き、ポップ・シュルレアリストとしてデビュー。『The Birth of Venus』や『The Pumpkin President』のような作品を展示した。初個展のタイトルにもなっている「meat(肉)」はライデンの重要なテーマである。
ライデンは、私たちが普段「食べ物」として認識している肉と、生きて呼吸をしている生物の「肉」との間における現代社会の切断性に注意している。「私の作品内における「肉」とは「矛盾」を呼び起こすものだ」とライデンはいう。
ライデンによれば、私たちは肉をよく食べるが、肉は生きている私たちの身体を構成している物質そのもので、私たちは皆、肉でできた衣服のような身体を身につけている。そのことに矛盾を感じるのだという。
2000年代
中期における注目の個展としては、2004年に開催された、ライデンの趣味の1つである骨董品や博物的な部屋に焦点を当てた個展『Wondertoonel』。シアトルのフライ美術館やカリフォルニアのパサデナ美術館で開催された。
フライ美術館では1952年に開館して以来の最高動員数となり、またパサデナ美術館でも同じく最高動員記録を達成。当時、ライデンの個展を担当したフライ美術館のキュレーターであるデブラ・バーン によると、謝肉祭(カーニバル)の儀式を模した部屋が作られ、その中にライデンの作品は設置されたという。
またロシアの作家で文学批評家のミハイル・バフチンによると、儀式的な見世物小屋、マンガ的な構成、様々なジャンルの俗語といった3つのジャンルで展示され。それらの要素はすべてライデンの作品に内在されるものであるという。
2007年には、ロサンゼルスにあるMichaek Kohn Galleryで個展『The Tree Show』を開催。この展示では、ライデンは近代人の自然観を探究。「巨大な自然の木々を見て自然への畏怖を感じるひともいれば、切り倒して商売にしたい人もたくさんおり、彼らは木々を商品としてか見ない」とライデンはいう。この個展でライデンはシエラクラブなどの環境保護団体の活動資金を調達するために限定作品を制作。
2009年には、東京にある小山登美夫ギャラリーで個展『The Snow Yak Show』を開催。雪のように白い架空の動物「スノーヤク」を中心とする様々なストーリーが紡がれた展示で、少女の身体の上に佇むヤク、半獣(ヤク)の美少女、ヤクの肖像などが並べられた。この展示では、これまで以上に孤独で、平和的で、また内省的な内容を示唆するものとなった。
2010年以降
2010年には、 ニューヨークのPaul Kasmin Galleryで、『The Gay 90’s: Old Tyme Art Show』を開催。個展の中心のテーマは、現代文化における「キッチュ」と「郷愁」と1890年代への「理想」と「感傷」を照応させるものとなった。ここでライデンはキッチュに対する魅力と抵抗への境界線を探究した。
同年、ライデンの絵画作品「The Tree of Life」が、ロサンゼルス現代美術館(MOCA)の企画『The Artist's Museum, Los Angeles Artists 1980-2010』で展示される。この展示は、MOCA創立30年の歴史において、ロサンゼルスにおける芸術的な対話を形づくるのに貢献したアーティストを紹介したものである。ライデンの作品はロバート・ウィリアムスと同じ部屋で展示された。
2016年には、東京・中野ブロードウェイ内Hidari Zingaroにて、希少エディション展「多様形態」を開催。
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今だ彼の中で失われることがない"Gay 90s"の探究を通じて、キッチュ文化に対する彼の美学を強調する。"Gay 90s"という言葉は、1920年代に造られた言葉で、19世紀終わりごろの素朴でシンプルな自然主義的なアメリカ生活へのユートピア的心情を指すものである。