森の目覚め / The Awakening of the Forest
鉱物学者がのぞく森の世界とは!?
概要
「森の目覚め」は1939年にポール・デルヴォーによって制作された油彩作品。ジョルジョ・デ・キリコやサルバドール・ダリ、ルネ・マグリットなどに影響を受けて、自己の内面世界を描くためにシュルレアリスムを積極的に問入れた始めた頃の作品である。
デルヴォーは幼少の頃の記憶を表現にする事が多く、本作は1864年のジュール・ヴェーヌの小説「地底旅行」内のエピソードから着想を得て描いている。本作で引用されているエピソードは、オットー・リンデンロック教授と甥のアクセルは地球の奥深くにある巨大キノコの森を発見するシーンであると思われる。
デルヴォーの場合、「地底旅行」のキノコの森が女性の森に置き換えられている。デルヴォーの全作品を振り返って、主題として女性へのエロスを描いている事から、原始的な森と女性の裸体を同一視していると思われる。画面左にいるオットー教授と背面に描かれているアクセルの顔は、驚くほどデルボー自身に似ていることから、この2人はデルボー自身を描いていると見てよいだろう。
満月の下、背景にはたくさんの機械のような裸体の女性が密集して描かれており、前景では植物と組み合わせた形で女性が描かれている。中程左にいる女性と中間にいる赤い服を着た女性は、二人ともビクトリア朝のドレスを着て、ランプを手に持っている。
オットー・リンデンロック教授は、本作以外にも本年から制作を開始する「月の位相」シリーズで頻繁に登場する。リンデンロック教授は、いつも何かを覗いている手振りをしているが、それはリーデンブロック博士は鉱物学者であるためである。その鉱物学者と女性に対するのぞき行為をかけていると思われる。
澁澤龍彦はデルヴォーに関してこのような評をしている。
「一言をもってすれば、デルヴォーの絵は、オナニストの想像力に媚びる絵だ。オナニスト的基質の芸術家には、デルヴォーのエロティックな裸女は、追い払っても消えない甘美な幻想となり、その心の無意識の片隅に、半ば羞恥と半ば渇望の念とをもって、現れる」。