アルルの女 / L'Arlésienne
「夜のカフェ」のジヌー婦人の肖像画
概要
作者 | フィンセント・ファン・ゴッホ |
制作年 | 1888年 |
メディウム | 油彩、黄麻布、キャンバス |
サイズ | 92.5 cm × 73.5 cm |
コレクション | オルセー美術館 |
「アルルの女」は、1888年にフィンセント・ファン・ゴッホによって制作された油彩作品。92.5 cm × 73.5 cm。パリのオルセー美術館が所蔵している。
ゴッホがアルルに滞在していたときに寝泊まりし、また黄色い家の家具を調達していたカフェ「カフェ・ド・ラ・ガール」のオーナーのジョゼフ・ミシェルジヌーの妻マリー・ジヌー(1848年6月8日-1911年8月2日)を描いた作品である。「ジヌー婦人の肖像」と呼ばれることもある。
「アルルの女」は複数存在する。最初のバージョンは現在、パリのオルセー美術館が所蔵しているもので、黄麻布キャンバスに油彩で描かれたものである(上の写真)。この作品はゴーギャンが所有していた。
2つ目のバージョンは、現在ニューヨークのメトロポリタン美術館が所蔵しているもので、キャンバスに油彩で描かれたものである。婦人のポーズや構図は同じではあるが、最初の作品ではテーブルに傘が置かれていたのに対し、2つ目の作品では本に置き換えられている。
ゴーギャンのスケッチを元にした「アルルの女」
サン・レミの療養院に入院している時期に、ゴッホはほかに1888年11月に制作したゴーギャンの木炭ドローイングを基盤にした5つのジヌー婦人の肖像を描いている。
1890年6月5日に妹のウィルに手紙では「100年後に人々に今まで分からなかったことが明らかになるようなポートレイトを制作したい。いいかえれば、私は写真で肖像を保存しようとしているわけではない。表現や特徴を際立たせる目的で近代的な美術手法を使い、自身の熱烈な感情で肖像を描きたいと思っている。」と説明している。
ゴーギャン、テオ、ゴッホ自身、ジヌー婦人がそれぞれ1枚ずつ所有し、またクレラー・ミュラー美術館が所蔵しているバージョンがあるが、象徴主義の詩人で画家でゴッホの初期の支援者であったアルベール・オーリエが所有していたものである。
なお、ジヌー婦人が所有していたバージョンは消失し、現在のところ見つかっていない。
一番有名なのはゴーギャンが所有していたバージョンで、背景がピンクで、現在サンパウロ美術館が所蔵しているものである。ゴーギャンは自身で描いたドローイングの肖像画よりもゴッホが描いた肖像画の方を礼讃していた。
背景に花が描かれた白っぽい「アルルの女」は、テオが所有していたもので、2006年にニューヨークのクリスティーズで競売にかけられ、4000万ドル以上の価格で落札された。
ゴーギャンの「アルルの女」
ゴーギャンもジヌー夫人の肖像画をゴッホと同時期に制作している。ゴーギャンのジヌー夫人の作品は、のちにゴッホの「アルルの女」の基盤となった木炭ドローイング画と「夜のカフェ」というタイトルで、背景にカフェを描いた油彩絵画である。