谷口ナツコ / Natsuko Taniguchi
反復点描壁画
概要
谷口ナツコ(1968年、北海道旭川生まれ)は日本の画家。
1993年に世田谷美術館で開催されたアール・ブリュットの展覧会「パラレル・ヴィジョン」で、線と点の反復で構成されたシメントリカルな城の絵画ジョセフ・クレパンに影響を受ける。自分自身も次第にクレパンのような絵を描きたいと思うようになり、独学で現在の点描方法を発明。ほかに、ルサージュ、ヴェルフリ、ゾンネンシュターンなどさまざまなアール・ブリュット作家の表現方法から影響を受けている。また、表現内容に関しては幼児性愛が主題になっているようである。
作品の主題となっているのは少女である。しかしその少女たちは怨念がこめられているような、呪われているようなかんじで、グロテスクに描かれる。グロテスクな彼女たちは真っ赤な森で血染めのナプキンをふりまわして飛び跳ねたり、子宮のような容れ物のなかで精子のおばけと抱き合っている。谷口によれば幼児性愛などが主題になっており、その作品たちは、痛々しいショックを私たちにあたえながらも、キラキラと昇華する。
2000年代半ばぐらいまでは、おもにデザインフェスタで展示活動していた。同時期にヴァニラ画廊やゾーンギャラリーなど小さなギャラリーで個展をしていたが、2008年のギャラリー・テオで個展を開催したあたりから現代美術へ活動の場を移す。谷口ナツコの作品が香港のクリスティーズに出品され、大作が約300万円で落札されたこともあった。
その後、しばらくミズマ・アクションでグループ展などで散発的に作品を発表していたが、2010年代になると活動はほぼ停滞する。2016年11月に東京新宿のアートコンプレックスセンター8年ぶりの個展を開催し、作品の強さは10年前からまったく失われておらず、エネルギッシュな作品が展示されていたことが確認されている。
・アートコンプレックスセンターの谷口ナツコ展を見る - mmpoloの日記
技法
ジョゼフ・クレパンの点と線の反復で構成された絵画に影響を受けているものの、当初、描き方が分からかったため、独学でクレパン的な技法を開発する。その方法とは、木工パネルに下地を作り、筆で下地を描いてから、トレーシングペーパーを円錐状に丸めてケーキのデコレーションなどで使用する絞り袋のようなものを作り、そこにアクリル絵具を入れて、すべての線や点をつぶつぶに絞り出して描く。この反復である。またアクリル絵具のほかに、ラメ入りや蛍光色、透明ゲルや仕上げのニスなどを使用。そうしてできあがった反復的な作品に光を当てると描いたすべての点が反射し、キラキラと目が眩むような美しい絵となる。
個展
■2001年
「アカイユメ、アオイユメ、ムラサキノキオク」ギャラリー砂翁、東京
■2002年
「谷口ナツコ」Desigh Festa Gallery、東京
■2003年
「谷口ナツコ」Desigh Festa Gallery、東京
■2004年
「谷口ナツコ」Desigh Festa Gallery、東京
「小さなこと」ヴァニラ画廊、東京
「おおきなはなし」Studio Zone、東京
■2006年
「ごあいさつ」Desigh Festa Gallery、東京
■2008年
「谷口ナツコ」ギャラリーテオ、東京
■2016年
谷口ナツコ 「止まれ 花がある」The Artcomplex Center of Tokyo 東京
◎今週のアートコンプレックスセンター◎
— アートコンプレックスセンター (@gallerycomplex) 2016年11月22日
ACT3:松尾 彩加 展
ACT4:伊藤彩恵子個展「つきのした にまいごと」
ACT5:谷口ナツコ 個展「止まれ 花がある」 pic.twitter.com/hZjWaRxiVg
谷口ナツコさんの個展『止まれ 花がある』(ACTにて。会期終了)。素晴らしすぎて2回お邪魔しました。谷口さんとたくさんお話させていただきとても嬉しかったです。 pic.twitter.com/bXsn0Dn9Zv
— Ráyka (@rayka_jp) 2016年11月28日
関連記事
彼の描く絵は、左右対称シンメトリーの奇怪な偶像、あるいはインドやエジプト風の寺院の絵である。63歳から描き始めたという。ある晩、楽譜を写していると、彼の手が五線紙のあいだに音符を書くことをやめ、ひとりでに動き出して、自分でもよくわからない不思議な幾何学的な図形を描き始めた。
■参考資料
・「谷口ナツコ」ギャラリーテオ、東京 パンフレット