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【作品解説】ルネ・マグリット「ゴルコンダ」

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ゴルコンダ / Golconda

個人と集団の葛藤


ルネ・マグリット「ゴルコンダ」(1953年)
ルネ・マグリット「ゴルコンダ」(1953年)

概要


作者 ルネ・マグリット
制作年 1953年
メディウム 油彩、キャンバス
サイズ 81 cm × 100 cm
コレクション メンリル財団

「ゴルコンダ」は1953年にルネ・マグリットによって制作された油彩作品。アメリカ・テキサス州ヒューストンにあるメンリル財団が所蔵している。

 

「ゴルコンダ」とは1687年にムガル帝国によって滅ぼされたインドの都市の名前で、かつて富で知られた幻の都のような都市であったという。「ゴルコンダ」というタイトルは、友人の詩人ルイ・スクテネアがつけたといわれている。

 

この絵では、黒いオーバーコートと山高帽を被った同一の男性が多数浮遊している。男性たちは菱型のグリッド線に添って一定の間隔を置きながら描かれている。マグリットにとってこの男たちはごく「普通の目立たない平均的な人間」を表しているように見えます。Twitterでいえば、100人前後のフォロワーのアニメやイラストアイコンのようなユーザーであろう。

 

そして、マグリット自身がこの山高帽の男に投影されている。マグリットのコメントによれば「目立ちたいと思わないから」という理由で、山高帽を描いているといいます。

 

浮遊した平均的な男たちは、遠くから見ると、山高帽の大雨の雫が落下しているように見え、「浮遊」と「落下」という矛盾した要素を同時に表現し、また「浮遊」と「落下」はマグリットの憂鬱とした感情を表現しているように見える。

 

しかしながら、背景は青空が澄み渡っており、憂鬱な感情と真逆である。背景のアパートはマグリットが実際に住んでいた郊外の環境とよく似ており、マグリットの「目立ちたいと思わない」喜びと、「普通」というどこか憂鬱な矛盾した感情を1つの絵にうまく表現している。

 

実際にマグリットはそういう人物で、スキャンダラスにも無縁で、幼なじみの妻と慎ましく生活していた芸術家であった。実際にマグリットはこのようなアパートに住んでいた。 

 

個人と集団の間


もう一つの解釈は、マグリットは個人と集団の間を「ゴルゴンダ」において表現しようとしたといわれる。

 

「ゴルゴンダ」は81cm × 100cmのそれなりに大きな絵で、近くに寄ると、この男性たち1人1人には異なる顔が描かれている事がわかる。しかし、遠くから見ると、どの人も似たようなノッペラボウのような男性に変化し、特徴のない大衆である。

 

つまり、1人1人に焦点を当てれば、きちんと差異があることが分かるにも関わらず、一斉に見ようとすると差異が分からなくなってしまうのである。マグリットは視覚美術において、このような個人と集団の間を表現を試みた。

マグリットによる作品説明


マグリットはこの作品についてこのようなコメントを残している。

 

「たくさんの男がいある。いろいろな男たちだ。だが、これだけたくさんの男が同時に現れると、それぞれの個性を考えることはなくなる。男たちは同じ服装をしている。できるだけ単純に、かたまりとして見えるように。・・・・・・ゴルコンダとはインドの古都であり、その富で知られていた。いわば幻の都のようなものである。わたしにとって空を歩くことはまるで奇跡のようなものだ。一方、山高帽は不思議でもなんでもない。ごくふつうの頭部を保護するものにほかならない。だから、山高帽の男たちはごくふつうの目立たない平均的な人間である。私もまたこの帽子をかぶっている。目立ちたいとは思わないからだ。」。(ルネ・マグリット)

 

■参考文献

Golconda (Magritte) - Wikipedia

・タッシェン「マグリット」

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