トーマス・ルフ / Thomas Ruff
コンセプチャル・フォトグラフ
概要
トーマス・ルフ(1958年2月10日生まれ)はデュッセルドルフ在住のドイツの写真家。ローレンツ・ベルジュ、アンドレアス・グルスキーらと、元発電所だったスタジオをシェアして、活動している。
ルフは一般的に写真表現をコンセプチュアルアートへと発展させたことで評価されている。パスポート写真のようなありふれた人物写真を拡大したり、何気ないインテリアや都市の風景写真を拡大することで、どこか不可思議でシュルレアリスティックな作品に見えてくるというもの。
トーマス・ルフは1958年にドイツ・シュヴァルツヴァルト、チェル・アム・ハーマスバッハで生まれた。1974年夏にルフは初めてカメラに関心を持ち始める。写真学校夜間クラスに通って本格的に興味を持つようになると、多くのアマチュア写真雑誌で見られるような撮影を模倣しながら腕を伸ばした。模倣しながら腕を伸ばす方法はアカデミーに入ってからも続いた。
デュッセルドルフ芸術アカデミーに入ると、ベルント&ヒラ・ベッヒャー夫妻のもとで5年間学ぶ。この頃からヨーゼフ・ボイスやマルセル・デュシャンらのコンセプチュアルな作品に大きく影響を受け、ルフ自身が写真表現をコンセプチュアルアートへと発展させていく。ほかにステファン・ショア、ジョエル・マイヤーウィッツ、新しいアメリカの写真作家にも影響を受けたという。
風景を中心に写真撮り始めたが、その後1950年代から70年代のドイツ一般家庭のインテリアの写真に移行し、続いてデュッセルドルフのアートやミュージックシーンの友人たちのポートレイトや建物の撮影する。
1981年から1985年の間、ルフは同じ手法で60もの半身像ポートレイト写真を撮影。頭部の少し上に写真の上端が来る9cm✕12cmのパスポート写真のようなブレのないイメージで、撮影されている人物はおおよそ25歳から35歳ぐらい。初期作品はモノトーン調で小さかったが、のちにカラーに切り替え、人物背景は単色カラーだった。1986年から、大サイズの写真作品に切り替わり、最終的には210✕165cmの写真作品となった。
最近のルフは、マン・レイやモホリ=ナジ・ラースローら20世紀初頭のカメラを用いずに紙の上に直接物を置いて感光させるフォトグラム(レイヨグラフ)を発展させた作品を制作している。一見すると透明度や照度の異なるランダムな形状が、螺旋や抽象的な形状や線で表現されるものである。従来のフォログラムがモノクロームだったのに対し、ルフのフォトグラムはコンピューター上で仮想的な「暗室」空間を使って、物体の配置と彩色をデジタル操作できるのが大きな違いである。