天野喜孝 / Yoshitaka Amano
レトロポップとオートマティスムの融合
概要
生年月日 | 1952年3月26日 |
出身地 | 日本・静岡県 |
表現媒体 | 絵画、キャラクターデザイン、版画、イラストレーション、彫刻 |
代表作 |
・『ファイナルファンタジー』シリーズ ・タツノコプロ作品 ・『吸血鬼ハンターD』 |
立ち位置が近い美術家 | |
この作家に影響を与えた人物 | ニール・アダムス、ピーター・マックス、西洋神話 |
天野喜孝(1952年3月26日生まれ)は日本の画家、イラストレーター、キャラクター・デザイナー、舞台美術家、衣装デザイナー。静岡県出身。
15歳でタツノコプロに入社。1960年代後半のアニメーション『マッハGoGoGo』で絵描きとしてのキャリアを形成がはじまる。のちに『ヤッターマン』『宇宙の騎士テッカマン』『人造人間キャシャーン』などタツノコプロ作品全般のキャラクターデザインを手がけた。
1982年に独立してフリーランスになると、菊地秀行の小説『吸血鬼ハンターD』シリーズや『魔界都市〈新宿〉』などのイラストレーションを担当する。その後、ゲームデザインも手がけるようになる。特に有名なのはゲーム「ファイナルファンタジー」シリーズのキャラクターデザインである。
1990年から天野は美術家としても活動を始める。世界中のギャラリーで天野独特なレトロ・ポップを活かした絵画を制作・展示している。キャラクターデザイン、イラストレーション、舞台デザインなどほかの美術家よりもかなり広範囲な領域を横断して活動し、それぞれで成果を挙げている。
2013年から現代美術シーンにも挑戦。ミヅマ・アートギャラリーで個展を開催し、また2014年には熊本市現代美術館で回顧展を行った。日本だけでなく、海外でもファンが多く、特に東南アジアでは現代美術コレクターの支持が大きい。アジアを中心に着実にコンテンポラリー・アーティストとしての活躍の場を広げている。
技法はシュルレアリスムのオートマティスムを活用しており、アクリルおよび自動車用の塗料を使ってアルミボックスパネルに絵を描く。
重要ポイント
- 初期タツノコプロ作品の多くのキャラクターデザインを担当
- FFシリーズ(1〜3)のキャラクターデザインで世界的に有名に
- 舞台美術や映像、衣装デザインなど広範囲にわたる活動
略歴
若齢期
天野喜孝は静岡県静岡市で生まれた。思春期に絵を描くことに夢中になり、1967年15歳のときにアニメーション制作会社タツノコプロダクションに入社。アニメーション部に配属され、そこで天野は日本の初期アニメムーブメントの波に乗って活躍する。
デビュー作は『マッハGoGoGo』。その後『タイムボカン』『科学忍者隊ガッチャマン』『宇宙の騎士テッカマン』『みなしごハッチ』などタツノコ作品全般のキャラクラー・デザインを手がけるようになる。
1960年代に天野は、アメコミと西洋美術様式の影響を受けている。当時にニール・アダムスがお気に入りで、アダムスの絵が表紙になっている古本のアメコミを集めていたが、中を開くとアダムスとまったく異なる作家であったアメコミに失望したという。
ほかに1960年代に西洋のサイケデリック・ムーブメントやポップ・アートの影響も受けており、当時のイラストレーターではピーター・マックスから影響を受けている。
1970年代になると天野は19世紀後半から20世紀初頭にヨーロッパで流行したアール・ヌーヴォーや浮世絵に影響を受ける。その後、1982年までタツノコプロで仕事をする。
タツノコプロから独立してフリーランスに
1982年に独立してフリーランスとなる。独立後の天野は、SFやファンタジー関連のイラストレーションを多数手がけるようになる。
独立後初期の作品としては夢枕獏の『キマイラ』シリーズのイラストレーションがよく知られている。
1983年に菊地秀行の小説『吸血鬼ハンターD』シリーズや『魔界都市〈新宿〉』のイラストレーションを担当する。1985年には映画版『吸血鬼ハンターD』のキャクター・デザインも手掛けた。
1985年から1997年まで、天野は栗本薫の長編シリーズ『グイン・サーガ』の挿絵を担当する。この一連の小説の仕事から天野は、西洋の古典から近現代美術までのスタイルを学び、自らの作品の血肉にしていったという。
以前のアメコミ調の画風から耽美的なスタイルに変化するのはこの頃である。
2000年に天野はイギリスのSF作家ニール・ゲイマン原作でコミック「サンドマン 夢の狩人-ドリームハンター」の作画を担当する。この作品で天野はアイズナー賞最優秀漫画関連書籍部門などさまざまな賞を受賞した。また2001年には、アメリカの漫画作家のグレッグ・ルッカとコラボレーションを行い「Elektra and Wolverine: The Redeemer」の作画を担当する。
ゲーム業界で活躍
1987年に天野はスクウェア(現スクウェア・エニックス)に参加し、RPGゲーム『ファイナルファンタジー』のキャラクター・デザインで多くの人注目を集める。
天野は伝統的なアナログのデザインとコンピューターを利用したアートワークの両方でコンセプチュアルなデザイン作業を行うように成る。
当時、天野はほかにゲーム会社の呉ソフトウェア工房でも仕事をしており、『ファースト・クイーン』シリーズをはじめさまざまなキャラクター・デザインを手がけている。
1994年に『ファイナル・ファンタジーVI』を最後に、天野は「ファイナルファンタジー」シリーズのメインキャラクター、イメージ、グラフィックデザインを辞任する。以後も原案やイメージイラストという形で何らかの形で関わってはいる。
その後、坂口博信や植松伸夫など『ファイナルファンタジー』シリーズの開発の中心人物によって2004年に設立されたゲーム会社ミストウォーカーに参加し、現在も『テラバトル』などのキャラクター・デザインを手がけている。
美術家として活躍
美術家としてのデビューは、1989年に東京・有楽町マリオンで開催された初個展「飛天」となる。このとき個展にあわせて画集も出版されている。1990年から天野は美術家として本格的に活動をはじめ、また舞台デザインなどの仕事も始める。
1995年にフランスのオルレアンにある国立自然科学博物館で個展を行い、国外でも知名度を上げる。アメリカでは1997年にニューヨークのパブリック・ビルディングで「THINK LIKE AMANO」展、1999年にニューヨークのエンジェル・オレンサズ財団「Hero」展を開催する。1999年には映画『ニュー・ローズホテル』でヒロシ役として出演し、俳優デビューもしている。
2013年より東京のミヅマアートギャラリーで個展「TOKYO SYNC」を開催。また同年、シンガポールのミズマ・ギャラリーでも個展「Mythopoeia」を開催。以後、アート・バーゼル香港の同ギャラリーのブースで作品を展示している。
2014年には熊本市現代美術館で個展「天野喜孝展 想像を超えた世界」を開催。
スタジオ・デバロッカ
2010年に「Devaloka」というタイトルで小さな個展を開催した後、天野は映像制作会社「スタジオ・デバロッカ」を設立、『Zan』という3Dアニメーション映画のプロジェクトを発表した。2010年12月15日、映画『Deva Zan』の公式サイトが公開され、2010年12月21日に記者会見が行われた。
記者会見で天野は、日本や東洋の神話を現在のテクノロジーを使って、SF的な神話を描きたいとかたった。『Deva Zan』は2012年春に公開予定だったが、その後、プロジェクトは立ち消えており、公式サイトも消滅している。
天野は2012年10月のインタビューで、アニメーションプロジェクトはまだ開発段階で資金調達段階にあり、TVシリーズとして実現する可能性があると話している。ほかにビデオゲームの適応の可能性も言及されている。
略年譜
・1952年:静岡県で生まれる
・1967年:15歳の頃、タツノコプロダクションに入社
・1982年:フリーランスとして独立
・1983年:「第14回星雲賞」受賞
・1984年:「第15回星雲賞」受賞
・1985年:「第16回星雲賞」受賞
・1986年:「第17回星雲賞」受賞
・1987年:ゲームソフト『ファイナルファンタジー』キャラクターデザイン
・1988年『ファイナルファンタジーII』キャラクターデザイン
・1990年『ファイナルファンタジーIII』
・1990年:『なよたけ』の舞台美術を担当(坂東玉三郎演出、日生劇場)
・1991年:『ファイナルファンタジーIV』キャラクターデザイン
・1993年:映像作品『天野喜孝 〜華麗なる幻想美の世界〜』発売
・1994年:『海神別荘』の舞台美術、衣裳デザインを担当
・1995年:アールビバン株式会社と版画作品の販売契約を結ぶ
・2000年:“THE SANDMAN:The Dream Hunters”(ニール・ゲイマンとのコラボ)でアイズナー賞の最優秀漫画関連書籍部門を受賞
・2000年:画家として「ドラゴン・コン賞」「ジュリー賞」受賞
・2001年:映画『陰陽師』の衣裳デザインを担当
・2007年:「第38回星雲賞」受賞
・2007年: 映画『ユメ十夜』の第7夜の監督を担当
・2011年:「Yoshitaka Amano: FOR JAPAN」 SUPERFROG Gallery / サンフランシスコ
・2012年:「Deva Loca Redux」Art Statements Gallery / 香港
・2013年:TOKYO SYNC」ミヅマアートギャラリー / 東京
・2014年:「天野喜孝展 想像を超えた世界」熊本市現代美術館
■参考文献
・4Gamer.net ― 天野喜孝氏が創り出す“神話”とは? 映画「DEVA ZAN」記者発表会レポート
■画像引用
※1:http://mizuma-art.co.jp/artists/amano-yoshitaka/
※2:http://mizuma-art.co.jp/artists/amano-yoshitaka/
※3:http://amano-exhibition.jp/