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壱岐紀仁インタビュー201602

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ファンディング前にしておくべき準備とは


無名のスタッフという状況でどう知恵を絞るか


ファンディングを開始する前の「ねぼけ」プロジェクトの基礎情報を整理すると、自分自身が有名な映画を撮影したこともなければ、有名な映画に出ている役者も一人もいない状態でした。全く無名の監督と俳優で投資魅力はほぼゼロの状態。つまり“無名である前提”でプロジェクトを進めないといけないわけです。

 

アレハンドロ・ホドロフスキー監督がクラウドファンディングを企画する場合だと、監督名こそが成功のカギになるわけです。ファンが元々たくさんいて、SNSでも多くの人と繋がっているから、自走で宣伝が広がり、資金がどんどん集まってきます。でも「ねぼけ」スタッフはみんな有名人ではありません。そこで知恵を絞らないといけなくなるわけです。

キャッチーなワードを洗い出す


そこで考えたことの1つは、自分が制作するコンテンツの中で誰もが知っているキャッチーなワードを探すこと。それが「落語」でした。ほかには「つかこうへい」。出演して頂いた俳優の中には、つかこうへいさんの門下生の方が多くいたんです。

 

そういう風に、誰もが知っているキャッチーなワードを洗い出していくことで、誰に向かってファンディングを呼びかければよいのかが分かってきます

 

つかこうへいさんは既に亡くなられていますが、つかこうへいさんの根強いファンの方は今でもたくさんいらっしゃいます。直接つかこうへいさんのコミュニティのところにファンディングの宣伝をすると「つかこうへいのところの劇団員がけっこう出てるぞ。一つ応援してみようか」というムードが生まれてきます。

映画「ねぼけ」では、入船亭扇遊など現役の大御所落語家が出演していることやロケ場所に鈴本演芸場が利用されていることなども大きな魅力。
映画「ねぼけ」では、入船亭扇遊など現役の大御所落語家が出演していることやロケ場所に鈴本演芸場が利用されていることなども大きな魅力。

出資者のメリットを考える


先に、クラウドファンディング映画と商業映画の違いとして、出資者に「応援したい」というムードを作ることが重要だといいました。問題はどうやって「応援したい」というムードを作るかです。ムード作りで重要なのは、出資者がこのプロジェクトに携わることで生じるメリットを提示しないといけません。

 

「壱岐というのがどんな作家であり」とか、自分の事だけを説明してもダメなんです。それは壱岐の事を知らない人にとっては、特に情報として価値はありません。無名の作家が自分の事に関する限定品リターンを付けても魅力はないわけです。「このプロジェクトは出資者のためのものなんです」と理解してもらうが重要になってきます。

 

具体的に「ねぼけ」の場合だと、落語業界であったり、神楽行事に関わる人達にとっては、活動の宣伝や活性化に繋がるというメリットがありました。

映画「ねぼけ」は宮崎新富町に伝わる新田神楽の幻想的な演舞をおさめた映画でもある。
映画「ねぼけ」は宮崎新富町に伝わる新田神楽の幻想的な演舞をおさめた映画でもある。

ハードウェアとソフトコンテンツで大きな差異がでる


 一方、携帯電話のケースとかカメラのレンズのようなハードコンテンツだと比較的資金が集まりやすいのですが、それは結局、ハードウェアは出資者自身が仕事や生活で使うものなので、出資のメリットが明確だからです。

 

 

映画やアートや音楽といったソフトコンテンツは、出資者にとって分かりやすいメリットが提示できませんから、ただ作家や作品の説明に終始するだけだと出資者に魅力が伝わらず、資金が全然集まらなかったというケースもたくさん見ました。本当に難しいんです、映画やアートや音楽は。



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