ファンディングが始まったらすること
プロジェクトページを常に賑やかにする
ファンディングが実際に始まったら、まずプロジェクトページ編集に力を入れる必要があります。ページを開いたときに「何かワクワクする」「何か自分も参加したくなる」ムードが伝わるページを作ることが大事です。プロジェクトページは出資者にとって、企画の最初のタッチポイント(窓口)になります。
「リターン」商品の充実ももちろん大事ですが、 何よりも重要なのは、プロジェクトに参加したくなるムード作りです。人は本来的に寂しがり屋なんです。人は賑やかな場所に集まってきます。お祭りと同じ感覚です。イメージ的には「ねぼけ」のファンディングとは、 「ねぼけ祭」をやるので、みんなで映画という神輿をかついでもらえませんかという感覚を作ることにエネルギーを注ぎました。
プロジェクト立ち上げの時は、どんなプロジェクトであれ0円からスタートする以上、応援者は一人もいない状態です。それでも虚勢でもいいから、賑やかな環境を作る努力と営業と、そのための施策が必要になります。
現在の投資金額を0円にしない
一般的に、人がファンディングページを開いたときに見るのは、トップの写真と最初のコンセプト、リードぐらいのものです。次に「現在、お金どのぐらい集まっているのだろう」というのを確認します。
このときに、0円にしないのが非常に重要です。「あっ、応援する人がいないんだ」と分かると、人はそこから出資意欲はかなり低下し、ファンディングの企画内容までは見てくれません。「けっこうお金が集まってるな。面白そうだな」と感じて、初めてスクロールしてページを閲覧してくれるようになります。
お金が集まってないプロジェクトって、人からみたらやる気がないように見えたりします。本気でやっているのかと。応援したくなるような、盛り上がっているムードを醸成しないと、出資者には参加してもらえません。だから最初は、恥ずかしい話ですが、自分自身で 5万とか10万とかファンディングしていました。
でも、ある程度波に乗ってしまえば、面識のない方でも友達経由で間接的に広がっていきやすくなります。実感として、応援は伝染していくものだと感じました。
ファンディング中は営業をする
よく聞かれるのですが「なんであんなにファンディングがうまくいったの?」と。普通に営業しただけなんです。
僕と主演で落語の現場に顔を出して、ファンディングの話をするわけです。宴席や打上げにも積極的に参加して、落語に来るお客さんにもチラシを渡して、1円でいいのでどうか応援お願いしますって頭を下げていました。
そういう “普通の営業”をファンディングする人の多くができてないと思います。お金を集めるということは、アーティストである前に、社会人であらねばなりません。出資者に、礼儀を尽くすのは当然のことです。
ちょっとした飲み会やトークイベントのときにチラシや企画書を準備してお客さんに渡せないとダメです。常に資料を持っていて、その場で現在進行形のプロジェクトであることを相手に実感させること。
現在進行形の企画であることが伝わると、直に監督や俳優と会うのですから、やっぱりTwitterやFacebookで「今、彼は何々をしているらしいね。ちょっと楽しみだ」とつぶやいてくれたりします。結果、それが膨大な広告費を使わずに出来る宣伝になるわけです。
営業日誌をウェブ上にアップする
クラウドファンディング中で特に重要になるのが営業日誌です。今日はどこへ取材に行きましたとか、今日は何々をしましたとか、自分の近況をできるだけアップデートする。
営業訪問先の人は自分の事が記事されてアップされていると、それはやっぱり嬉しいものなんです。出資者もプロジェクトの一員として関わっている事に実感が出てくるわけです。「自分がこのプロジェクトの制作に関わっているのだな」という感情を起こさないと、心は動きません。
あなたはお金だけ出してくださいという態度では、人の心は動きません。出資者に「僕たちは外からだけで、結局あなたたちが好き勝手やるだけなのね」と思われたら、その人はわざわざ出資しようとは思いませんよね。作品の内容を伝えることばかりに縛られて、社会人としての常識を忘れては、人もお金も、1ミリだって動かせません。
ファンディングはお金を集める行為である以上、それはもう “事業”なんです。その自覚と覚悟を持てるかどうか、それがファンディング成功の鍵となります。
さまざまな業界の人々を交錯させて盛り上げる
「ねぼけ」は、クラウドファンディングの企画の中でも、すごく盛り上がった企画のひとつだったのですが、これは壱岐という名前で盛り上がった企画ではないんです。「ねぼけ」というプラットフォームで「落語」や「神楽」 など、さまざまな業界の人々が交錯して盛り上がった企画です。
作家の角田光代さんからコメントが頂けましたが、落語ファンは角田さんがコメ ントで褒めてくれたらうれしいわけです。すごい作家が落語をほめてくれたと。異業界の著名人が落語業界のことを褒めるのは、落語ファンにとっては客観的な意見になりますから、『話題』が生まれます。
そういうクロスオーバーのプラットフォームをうまく作っていくことで、企画に参加している人達の気持ちはヒートアップしていきます。異業種デスマッチの空気感といいますか。プロレスも正統派と正統派が戦うよりも、ヒールレスラーや外部団体と戦うときの方が断然盛り上がっていきますよね。映画作りも同じように、身内のため映画にならないようにしないといけません。
身内や自分が立っている業界の外側にいる人たちを、一人一人 丁寧に、時に大胆に巻き込んでいけるかが、ファンディングを進めていく上で重要になると思います。
壱岐流ファンディング成功のポイント
- 出資者に「夢を見させる」企画を作ろう
- 誰もが知っているキャッチーなワードを洗い出そう
- プロジェクトページは「お祭り」のように賑やかにしよう
- ひたすら営業しよう
- 営業日誌を頻繁にアップデートしよう
- さまざまな業界の人達をクロスオーバーさせよう
劇場情報
新宿ケイズシネマにて12月17日(土)より劇場公開 モントリオール世界映画祭正式出品
東京 |
ケイズシネマ(2016年12月17日〜2017年1月13日迄公開) |
大阪 | 第七藝術劇場(2017年ロードショー) |
京都 | 京都みなみ会館(2017年ロードショー) |
愛知 | シネマスコーレ(ロードショー) |
宮崎 | 宮崎キネマ館(2016年10月15日〜10月28日迄公開) |